介護保険制度の見直し

介護保険制度が施行されてから、4年目を迎えています。本年7月末現在で、要介護(要支援を含む)者は361万人、在宅サービス利用者は206万人、施設サービス利用者は73万人です。高齢者の10人に1人、約11%の方々が介護保険を利用しています。介護保険導入前と比較をすると、利用者数もサービス量も急増しました。介護保険は、予想以上に早く高齢者の生活に定着しています。

 

一方で、多くの課題も抱えています。特別養護老人ホームへの入所申込みが急増し、簡単には入所できません。施設入所希望者の増大に比べて、在宅重視という制度創設のねらいが果たされていないようです。サービスの質に関する苦情も多く寄せられています。ケアマネジャーによっては、ケアマネジメントが不十分です。保険料の増大に対する被保険者の不満が大きいことも、保険者である市町村にとっては難問です。さらに、介護サービスの利用量の伸びが大きいので、今後の財政負担が懸念されています。

 

介護保険法附則では、施行後5年を目途に制度全般について検討し、必要な見直し等を行うことが規定されています。そこで、厚生労働省では、社会保障審議会の中に介護保険部会を設置し、本年5月から審議をスタートさせました。具体的な改正内容がまとまるのは来年になりそうですが、審議の参考資料として重要なものが、厚生労働省老健局長の研究会である高齢者介護研究会(座長:さわやか福祉財団理事長 堀田力)が、本年6月にまとめた報告書「2015年の高齢者介護」です。

 

これは、団塊の世代が65歳以上の高齢者の仲間入りをする2015年の頃を念頭において、あるべき高齢者介護システムの姿をまとめたものです。キーワードは、「高齢者の尊厳を支えるケアの確立」です。そのために、リハビリテーションの充実、小規模多機能拠点を整備し在宅でも24時間安心できる生活の保障、施設・在宅二分論を超えた「新しい住まい」、痴呆性高齢者に力点を置いたケアモデルの確立等、新たな提案が数多くなされています。

 

一方、手前味噌になって恐縮ですが、本年7月に刊行した拙著『介護保険見直しの争点』(2003年、法律文化社)も、介護保険制度の見直しについて考える上で有益な本です。この本は、「政策過程からみえる今後の課題」という副題にあるとおり、旧厚生省内で介護保険制度の企画・立案が始まり、審議会や与党との議論・調整を経て、1996年11月に介護保険法案が国会に提出されるに至る政策過程について分析したユニークな書です。

 

大きな制度創設となる法案が成立したときに、関係者は、「時の運、地の利、人の和」に恵まれたからと説明することが多いのですが、この本では、介護保険創設に関する「時」(連立政権下における政策形成と与党主導型の政策決定)、「地」(介護問題に対する国民の関心の高まり)、「人」(国会議員や官僚、関係団体の人々)の状況を詳細に描いています。

 

また、被保険者の範囲(40歳の年齢を下げることの是非)、障害者支援費制度との関連、介護保険施設の在り方、家族介護の評価など、今回の見直し議論の論点となっているものの多くが、既に制度立案時に議論されていたことがわかります。

 

国保サイドからみると、介護保険制度は、第2号被保険者の保険料の賦課・徴収、医療と介護の区分けや連携等の問題で、関係が深い制度です。さらに、医療保険制度改革の中で、国保の統合・再編が議論されていますから、保険者の都道府県単位化等の国保制度の変化が、介護保険に影響を及ぼす可能性も大です。当分、介護保険見直し議論と、医療保険制度改革議論の双方から、目をはなすわけにはいきません。

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