公的年金制度の行方

9月11日の読売新聞に、同社が全国の有権者3千人を対象に行った「社会保障に関する全国世論調査」の結果が掲載されていました。それによると、国の年金制度を全体として信頼していない人は57%と、過半数を超えています。一方で、老後の生活資金として頼りにしているものについては、63%の人は「国の年金」をあげ、「預貯金」(57%)よりも多くなっています。公的年金制度は信頼できないが頼りにせざるをえない、という人々の気持ちがあらわれています。

 

2004年の年金制度改正に向けて、改正議論が本格化してきました。昨年12月には、厚生労働省試案の提示。本年9 月には、社会保障審議会年金部会が意見書をとりまとめ、坂口厚生労働大臣試案も公表されました。年金部会意見書は、最終的な保険料水準を明示し、給付水準を調整する「保険料固定方式」の導入を提言しています。坂口試案では、年金積立金を長期にわたって取り崩していくことにより、給付水準の引き下げを小幅なものにとどめるというものです。

 

高齢者世帯の収入の約6割は年金というように、今や年金は高齢期の生活に不可欠のものですが、年間で30兆円もの給付額になりますと、その負担をどうするのかが最大の課題です。現在の年金制度の仕組みは、現役世代の負担で高齢者世代の年金を支えるという賦課方式ですが、少子高齢化の進展等により、現役世代の負担は増大する一方です。国民年金の世界では、意識的に保険料を支払わない未徴収・滞納者が増大し、保険料納付率は60%台という低率になっています。「国民皆年金」が名前だけのものになりつつあります。

 

厚生労働省では、国民年金特別対策本部を設置し、納付率80%を目標に省をあげて取り組むこととなりました。国民年金には国庫負担が入っていますから、平均寿命まで生きれば保険料負担よりも年金受取額が多いという得をする制度です。また、障害年金も受け取れます。納付率回復のためには、年金広報の充実も重要です。

 

今回の審議会意見書は、「将来にわたり持続可能な年金制度」とすることがねらいですが、厚生労働省試案のとおり、保険料水準は現行の1・5倍となる年収の20%程度を上限とし、給付水準は現在よりも若干下げるということを想定しています。果たして、このような方法で、安定的な年金制度となり、国民の合意が得られるかが、今後の争点です。

 

西沢和彦著『年金大改革』(日本経済新聞社、2003年)は、厚生労働省試案では、高齢世代と若い世代との間の給付と負担の格差が解消しておらず、問題の先送りにすぎないと批判しています。団塊の世代が年金世代となる前に抜本改革を行うべきで、(1)厚生年金(報酬比例部分)の給付3割カット、(2)基礎年金の財源を全額消費税とする、(3)積立金の段階的な取崩し、等の具体案を提言しています。給付カット案については反対論も多いことでしょうが、最近では、財務省や経済産業省も、厚生労働省案に比べてより大きな給付引き下げを提案しています。

 

年金制度の持続可能性は、公的年金の分野ばかりでなく、企業年金の世界でも大問題となっています。企業会計制度の変化により、厚生年金基金の積み立て不足が明白となり、基金の解散や、代行部分の国への返上等の動きが活発となっています。2001年に法制化された確定拠出型年金制度を導入する企業も増えています。「年金情報」編集部編『企業年金の真実』(格付投資情報センター、2003年)は、具体的な企業の対応事例を示しながら、最近の企業年金をめぐる変化を詳細に伝えています。

 

個人の寿命や経済状況の将来を正確に予測できない点に年金論議の難しさがありますが、少なくとも年金問題は現在の世代で解決すべきこととし、将来世代に負担のつけ回しにならないようにすべきでしょう。

←前のページへ戻る Page Top▲