こくほ随想

第9回 
ワークエンゲージメントのカギは上司にあり

11月初め、帝京大学とハーバード大学の提携30周年を記念したシンポジウムのため、ハーバード大学(米国ボストン市)を訪問しました。日本のコロナ対策をテーマに講演しなければならず、私としては、とても名誉な機会であるとともに、かなりハードルが高いものでした。また、今回の訪問では、本学の学長・副学長ご夫妻と同行しました。お二人に同行するのは初めてのことで、実は講演より緊張しました。結果、特段問題なく(おそらく)、無事に任務は終了しました。

旅のエピソードはいくつかあるのですが、その一つがハンバーガー屋さんに行った時のことです。ランチは何にしようかと相談していると、お二人が、日本で時々食べているハンバーガー屋さんのチェーン店があるので、日米で食べ比べてみたいとの提案があり、一緒に行くことになりました。学長たちも、ハンバーガーを食べるんだという素直な驚きがありました。

よくあるファストフード店の小さなテーブルでお二人と向き合って、ハンバーガーセットを食べました。向かいのお二人がうれしそうにハンバーガーを食べ、ポテトをシェアするのを見て、こんな場面はめったにないと、ツーショットの写真を撮らせていただきました。

その写真がとてもいいのです。うれしそうに、ハンバーガーとポテトを食べている様子は、海外に初めて行って、どこで何を食べればよいのか悩んで、日本でもなじみのあるハンバーガー屋さんに寄った普通の仲良しカップルみたいでした。見ているこちらがほのぼのと、うれしくなるような写真です。私は、お二人の部下ですので、例えるならば、両親が仲良くしている姿を見て、安心する子供みたいな気持ち、と言えばわかりやすいかもしれません。

近年、“ワークエンゲージメント”が注目されています。これは、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」 (熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態のことを言います。ワークエンゲージメントに影響を及ぼす要因、あるいは高める要因はさまざまありますが、職場環境や上司との関係性が重要とされています。

会社などで、上司がいつも不機嫌な顔をしているとか、上層部の仲が良くないことがよくあります。そういう場合、部下はやる気をなくしてしまったり、不安になったりしがちです。逆に、上司が笑顔で、仲良くしていると、それだけで、職場環境が明るくなり、心理的な安全性も高まります。部下は安心して、やる気をもって働くことができるのです。つまり、ワークエンゲージメントが高まるわけです。

私を含めて、上司や管理職には少なからず辛いことや大変なことがあるわけで、つい、笑顔を忘れがちになってしまいます。いつもとはいきませんが、できるだけ笑顔で、そして、みんなと仲良くやっていきたいところです。辛い時は、ボストンでのお二人の写真を眺めて、安心したいと思います。なお、笑顔の重要性は、上司や管理職だけではなく、すべての人に当てはまるのかもしれません。

このツーショット写真をみなさんにもお見せしたいところですが、お許しは出ないでしょうから、想像にお任せします。同じ気持ちになりたい方は、上司と一緒にハンバーガー屋さんにでも行ってみるとよいでしょう。

記事提供 社会保険出版社〈20字×70行〉

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