こくほ随想

普通調整交付金の見直し

今年は国保制度発足以来といわれる大改革の年。平成25年の社会保障制度改革国民会議報告から、足かけ6年に及ぶ長丁場であった。この間の関係者の膝を突き合わせた真摯な協議と、改革に向けた熱意の賜物である。激変緩和措置を講じつつ、住民への丁寧な説明に努め、円滑な施行に漕ぎ着けたい。

しかし、これが終着点ではない。早くも新制度施行後の検討事項として、普通調整交付金制度の見直しがあがっている。

「骨太の方針」と通称されている経済財政運営と改革の基本方針2017(閣議決定。平成29年6月9日)は、「現行の普通調整交付金は、医療費が増えると配分が増える算定方法ともなっているため、所得調整機能を維持しながら、医療費適正化のインセンティブを効かせる観点から、地域差に関する調整・配分の在り方を検証し、平成30年度の新制度への円滑な移行に配慮しつつ速やかに関係者間で見直しを検討する」とした。

これに先立って、経済財政諮問会議(5月23日)において塩崎厚労大臣は、国保制度における医療費適正化等のインセンティブを強化し、都道府県間の医療費格差を解消していく政策の一環として、「普通調整交付金の見直しについても検討していく」と表明。さらに、財務省の財政制度等審議会の建議(5月25日)は、「国保の普通調整交付金について、各地域の実績医療費でなく、医療費の全国平均を踏まえた標準的な医療費水準に基づき配分する」よう提案した。

このような中、全国知事会、全国市長会、全国町村会の地方3団体は、5月17日、見直しに反対する緊急要請を、財務・総務・厚労の3省と内閣府へ提出。「普通調整交付金が担う自治体間の所得調整機能は大変重要であり、これまでの国と地方の協議により、平成30年度以降においても、その機能は引き続き維持することとなっており、その見直しは容認できない」というものである。同様に、国保関係9団体による国保制度改善強化全国大会(11月30日)においても、見直し反対を決議した。

見直し論の根拠は何か。財政制度等審議会建議の参考資料では、現行制度では実績医療費を基準に配分されるため、「年齢構成では説明できない部分にも、国庫負担が充てられている」ことを指摘し、「各自治体の年齢構成のみを勘案した標準的な医療費水準を前提として交付額を決定する仕組みに改めるべき」という。これに対して、国保関係団体は現行の所得調整機能維持を主張するのだが、相容れない対立ではないように思われる。

骨太の方針は、国保陣営が求める「所得調整機能を維持」した上で、新たに医療費適正化機能を組み込ませるべく見直しを検討するもので、調整交付金の機能をより高めるものと私は理解している。

新制度では、基本的考え方として、都道府県内の市町村間の年齢構成と所得水準の違いを完全に調整するという観点から、年齢構成調整後の医療費水準と所得水準に応じて市町村の納付金を決定する。

一方、47都道府県間の調整機能を担う普通調整交付金は、所得水準の調整にとどまり、年齢構成の調整は行わない。ただし、65歳以上の高齢者については、前期高齢者医療制度による調整が行われているから、65歳未満も含めて年齢構成の調整を徹底すれば、都道府県内と同様に都道府県間においても調整が完結することになる。これにより、年齢構成後の医療費水準が高くなれば調整交付金の配分が減少し、逆であれば増えるので、医療費適正化のインセンティブが強化される。

なお、すでに保険者努力支援制度において、年齢構成調整後の医療費水準等、各都道府県の医療費適正化等の取組の成果を評価する指標が組み込まれている。これは、普通調整交付金見直しの方向性とも一致することに注目したい。


記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

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