こくほ随想

2016年度予算

2016年度予算は、3月29日順調に年度内成立した。総額96兆7218億円で、当初予算としては史上最大規模となった。

歳入は、企業の業績改善で税収は25年ぶりの高水準となる57兆6040億円(対前年度+3.1兆円)を見込み、新規の国債発行額は34兆4320億円(対前年度▲2兆4310億円)で、09年度以来、7年ぶりの低水準に抑えた。

一方、歳出は、政策向け経費が73兆1097億円、その内訳は社会保障31兆9738億円、地方交付税交付金15兆2811億円、公共事業5兆9737億円、文教・科学技術5兆3580億円、防衛5兆541億円などで、国債費(借金の返済)は23兆6121億円となっている。

政府は15年6月に、20年度までの財政健全化計画を閣議決定した。政策向け経費を借金に頼らず、税収などで賄えるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する目標を掲げている。つまり、これは新規の国債発行額と国債費(借金の返済)を同じ額にすることを意味する。そうすれば、新たな借金をすることなく、予算が組めるということになる。

16年度の基礎的財政収支の赤字額は、新規の国債発行額34兆4320億円から国債費(借金の返済)23兆6121億円を引き算した10兆8199億円となっている。これは15年度の13兆4123億円からはかなり改善した。しかし、20年度までに基礎的財政収支を黒字化する目標はかなりハードルが高い。

財政健全化計画では、最大の歳出要因である社会保障については、毎年5000億円程度の伸び(1.6%程度)に収めることとされた。この5000億円は社会保障の高齢化に伴う増加分に相当する伸びといわれている。従って、技術進歩に伴う医療費の伸びなどは入っていない。かなり、厳しい目標である。

16年度の社会保障の予算編成を振り返ると、昨年夏の概算要求の段階で社会保障費の自然体の伸びは6700億円と見込まれていた。これを5000億円の枠に収めなければならないので、1700億円程度の削減が必要になった。そこで、昨年12月の予算編成過程では、薬価基準のマイナス改定や薬局に対する調剤報酬の見直しなどにより、なんとか初年度の目標を達成できた。

しかし、今年の年末までの17年度予算編成では、診療報酬や介護報酬の改定は行われない。従って、社会保障の伸びを5000億円に収めようとすると、国庫負担の削減のために、患者負担や保険料の増などが必要になるが、まだ、これといった具体策があるわけではない。

一方、社会保障の財源となる消費税については、17年4月から8%から10%への引き上げが予定されているが、その際食料品などについて軽減税率を導入することとなった。軽減税率の導入により、消費税収入は約1兆円減ることになる。ところが、社会保障と税の一体改革では、消費税の引き上げ分はすべて社会保障に充てることになっている。そうなると社会保障に1兆円の穴が開くのではないかということが、今国会では問題となった。この1兆円のうち4000億円については、医療と介護の高額療養費の総合合算制度の拡張等の実施を見送ることでやりくりがついたが、残りの6000億円の財源確保については年末までの宿題となった。

以上、16年度の予算が成立したばかりで気が早いが、既に、焦点は17年度予算編成に移っている。社会保障の伸びを5000億円に収められるか、軽減税率で穴の開いた6000億円をどう財源措置するか、参議院選挙が終わると直ちに17年度概算予算編成が始まる。

最も、今、新聞紙上で取り沙汰されている衆・参同日選挙が行われ、消費税の10%への引き上げが再延期されると全く別の様相になってしまうが。

記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉

 

 

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