こくほ随想
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介護と後期高齢者医療の保険料改定を考える新年度になり、多くの市町村・都道府県で、介護と後期高齢者医療の保険料が引き上げられた。全国平均(月額)では、第1号被保険者の介護保険料は4,160円から4,972円へと812円(19.5%)増、後期高齢者医療保険料は5,249円から5,561円へと312円(5.9%)増。両者を合わせると、10,000円を超え、10,533円になった。 将来はどうか。3月に厚生労働省が発表した『社会保障に係る費用の将来推計』では、平成37年度には、介護保険料8,200円程度、後期高齢者医療保険料6,500円程度、合わせて14,700円程度になる。これには、社会保障・税一体改革によるサービスの充実が反映されている。現状のままでは、それぞれ6,800円、6,400円で、合わせて13,200円にとどまる。
公的年金の水準が抑制されるなかで、このような負担増が受け入れられるだろうか。誰もが抱く共通の不安であろう。 振り返ると、介護保険が始まった平成12年度の全国平均の保険料は2,910円であった。それが今では、4,972円へと1.7倍に上昇した。このような急激な負担増が受け入れられたのは、利用者が増え、サービスの価値が認められてきたからである。 特に在宅サービスの伸びが著しい。つい昨日までは、嫁の介護が当然のような風潮があり、他人を家の中に入れたがらないのが日本文化だ、などと言われていた。それが今では様変わりし、街を行き交う訪問介護やデイサービスの事業者の車を見かけることが日常化した。しかも、このサービスを今では自分の親や近隣のお年寄りが利用し、やがては自分も利用する側に回る。こうして介護保険の価値が実感できるようになり、負担増が受け入れられてきたのである。 将来に向けても同様ではないか。介護保険のサービスが必要不可欠なものである限り、一定の負担増は許容されるに違いない。 ところで、『将来推計』の介護と医療の保険料を比べると、改革後の介護保険料の上昇が目立つ。平成21年度では、介護保険料4,160円、後期高齢者医療保険料5,236円で、1,076円ほど医療保険料の方が高かったのだが、今では589円の差に縮小した。それが平成37年度には完全に逆転し、しかも介護保険料の方が1,700円も上回る。 住みなれた地域で、尊厳ある人生をまっとうしたい。その願いに応える上で、医療から介護へ、病院・施設から在宅への政策展開を図る。それによる必然的な結果である。 ただし、『将来推計』には、先送りされた改革事項、すなわち短時間労働者の全面的な適用拡大、被用者保険介護納付金の総報酬割導入、重度化予防に効果のある給付の重点化、それらに連動した低所得者の国保・介護の保険料軽減などは含まれていない。 これが実現し、例えば、介護保険の第1号保険料の低所得者軽減強化について、所要額(1,300億円)の全額を低所得者の保険料軽減に充てる場合、低所得者の保険料水準を3割程度引き下げる効果があるとされている。保険料負担増を緩和する上でも、一体改革を推進したいものである。 記事提供 社会保険出版社〈20字×80行〉
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