「注文した商品が到着した時点で破損していた」「依頼しておいた仕事の品質が期待外れだった」
など、「クレーム」を言いたくなる場面があります。
「クレーム」は、英語では“Claim”であり、「正当性のある権利を主張する」「相手に何かを請求する」が本来の意味です。この「クレーム」と「苦情」は似たような意味で使われがちですが、
「苦情」にあたる英語は “Complain”で、「不平・不満」というニュアンスを強く持ち、
「クレーム」とは意味合いが異なります。
なんとなく、語尾に小さな「っ」が入るような語調、こわばった表情、緊張感のある声。それらがセットで伝えられるのが、「苦情」です。「苦情」によって不平・不満を表現することはできますが、自分が本当に求めていることを相手に伝えることはできません。本当に求めているのは、「この状況を改善してほしい」「自分が得たいものを提供してほしい」ということ。つまり上記の場面では、Aさんは「できるだけ速やかに新しい商品と交換してほしい」、Bさんは「求めているレベルの品質の成果を出してほしい」がそれぞれ相手に求めていることです。
自分が求めていることを相手に伝えるためには、単に不平・不満をぶつける「苦情」ではなく、「クレーム」のほうが有効となります。 そして、「クレーム」を上手に伝えるために役立つのがアサーションです。アサーションとは、相手に配慮しつつ、自分の気持ちや考えを正直に伝えることを意味していて、右記のポイントに気をつけると実践できます。
自分が「してほしいこと」を正直に伝えればよいのに、文句だけ言ってなんとかしようとすることはかえって逆効果です。ついカッとなって、「なんで○○してくれないの!?」「いったいどういうことなんだ?」と相手を責める疑問文を使うことも、お互いの関係を悪化させるだけで、状況は何も変わりません。
感情的になって不平・不満をぶつける前に、まずは冷静になって、相手に受け入れてもらいやすい言葉で、自分の意見を正直に伝えてみる。それが、お互いの関係を保ちながら、自分にとってうまく物事を進めていくためのコツなのです。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『はじめての後輩指導』(経団連出版)、『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)など。