共済組合担当者のための
年金ガイド

共済組合に提出する年金請求書、
基礎年金番号と個人番号の両方を記載へ

公布の日(令和5年9月29日)から施行

第3号厚生年金被保険者として地方公務員共済組合に加入期間のある人が年金請求を行う場合、裁定請求書を地方公務員共済組合に提出する場合はもとより、日本年金機構の年金事務所に提出する場合についても、個人番号および基礎年金番号の両方を記載することになりました。
地方公務員等共済組合法施行規程等の改正は、公布の日より施行とされていますので、令和5年9月29日(金)より施行となります。

(*)筆者注 :筆者の地の文では、原則として、「および」「または」とひらがな表記をしているが、総務省のパブリックコメントでは「及び」「又は」と漢字表記となっている。そのため、パブリックコメントを引用した箇所は、「及び」「又は」となり、漢字表記とひらがな表記が混在している。
あわせて、総務省のパブリックコメントでは「年金の裁定請求書」と表記されているが、筆者の地の文では、単に、「年金請求書」と記述している箇所があり、表記が一部混在しているが、ご了解ください。

「個人番号又は基礎年金番号」から
「個人番号及び基礎年金番号」を記載へ

詳細はまだ定かでない部分もありますが、総務省の行ったパブリックコメントの回答を参考に、どのような手続きに変更になるのかを、現段階でわかる範囲内でこれから箇条書き的に述べていきます。
ただし、この内容は令和5年(2023年)10月5日現在のものなので、この後、運用についての新しい指示文書が出るかもわかりません。その点はご留意ください。
総務省の行ったパブリックコメント(意見募集の段階)では、改正の趣旨を次のように記していました。

(2)年金の裁定請求書における個人番号の記載の徹底

〇厚生年金保険給付等に係る請求、届出その他の行為については、厚生年金保険法施行規則(昭和29年厚生省令第37号)に定めるところによるものとされ、老齢厚生年金等について裁定を受けようとする者は、個人番号又は基礎年金番号を記載した裁定請求書を、日本年金機構に提出しなければならないこととされている。

○また、組合員であった場合は、施行規程第120条第1項において、当該規則の規定を読み替え、個人番号又は基礎年金番号を記載した裁定請求書を、組合に提出しなければならないこととされている。

○今回、老齢厚生年金等の裁定請求書においても個人番号の記載の徹底を図るため、施行規程第120条等を改正し、老齢厚生年金の裁定請求書においても個人番号及び基礎年金番号を記載することとする等、所要の規定の整備を行う。

(筆者注) :一部、文字をカラー化・太字化したのは筆者による。
施行規程とは、地方公務員等共済組合法施行規程のこと。

年金請求書の「個人番号又は基礎年金番号」欄について、従来はどちらかひとつ記入すればいい、ということであったのが、改正後は、どちらかひとつではなく、「個人番号及び基礎年金番号」の両方を記入しなさい、と変更することについて、意見を求める(パブリックコメント)というものでした。

個人番号の記載の「徹底」(地方公務員共済組合)
「義務化」(国家公務員共済組合)

ところで、今回の改正については、総務省(地方公務員共済組合)だけでなく、財務省(国家公務員共済組合)も同様のパブリックコメントを行っています。
文部科学省(私学事業団)は、地共済と「実質的に同一の命令を定めるもの」であるため、「事前に案を公示して意見の募集を行いませんでした」とのことですが、同趣旨の改正を行っています。

厚生労働省(日本年金機構)は、共済組合で行うような年金請求書に「個人番号及び基礎年金番号」の両方の記載を求める、という改正は行いませんでしたので、当然のことながら、同趣旨のパブリックコメントは実施していません。

なお、同じ共済組合といいながら、パブリックコメントの意見募集の文言を読み込むと、総務省は個人番号の記載の「徹底」(地方公務員共済組合)であり、財務省は個人番号の記載の「義務化」(国家公務員共済組合)であり、記載の「徹底」と「義務化」ということで、少し、表記に温度差があるのが、印象として残りました。

今回の改正の背景:個人番号の紐付け誤り

今回の改正である、年金請求書に個人番号の記載を、事実上、「義務化」するという背景には、何が原因しているのでしょうか?
文部科学省のパブリックコメントによれば、次のように記されています(意見募集はせず、結果のみの公表)。

令和5年6月21日のマイナンバー情報総点検本部において、マイナンバーの紐付け誤りを受け、総理大臣から「今後、新たな誤りが生じないようにするための仕組みづくり」として、マイナンバー登録に係る政省令の見直しを本年秋までを目途に行うよう指示があった。

令和5年8月8日に開催された第2回マイナンバー情報総点検本部において、「総点検の中間報告」として、次のような報告がなされています。

(共済年金)

各共済において、全ての年金受給権者について、共済が保有している情報とJ-LIS照会して得た情報を突合し、点検を実施した。

その結果、点検対象数約510万件のうち、地方公務員共済組合で112件、国家公務員共済組合連合会で6件、合計118件(点検対象の約0.002%)のマイナンバーの紐付け誤りが判明した。

その主な原因は、J-LIS照会結果について、住所の一致を確認せず、別人のマイナンバーを紐付けたことによるものである。

なお、この118件の全てについて、年金支給額に影響がないことを確認している。

対応策としては、資格取得届書や年金裁定請求書に、本人がマイナンバーを記載するよう9月中に省令改正を行うとともに、記載したマイナンバーが正しいか確認するため、本人が記載したマイナンバーをもとにJ-LIS照会を行い、4情報(氏名、生年月日、性別及び住所)が一致することを確認することとする。

【出典】 マイナンバー情報総点検本部第2回(令和5年8月8日)開催
<資料1>3ページ。
(筆者注) :「J-LIS」とは、「地方公共団体情報システム機構」のこと。
なお、小見出しで、(共済年金)とあるが、一元化前に決定された共済年金を意味するのか、ただ単に、共済組合の決定した年金(2階部分の厚生年金・旧3階部分の経過的職域加算額も含む)の意なのかは、定かではないが、筆者としては後者と考えている。

マイナンバーの総点検を踏まえた再発防止対策

前掲の「総点検の中間報告」の中で、「(共済年金)対応策」が記述されていますが、別ページで、全体的な再発防止対策として、次のように記されています。

3.再発防止対策

(略)

今般明らかとなった紐付け誤りの多くは、申請時に、申請者本人からマイナンバーの提供がなかった結果、制度管理側で自ら申請者のマイナンバーを取得することとなり、その際、誤って他人のマイナンバーと紐付けてしまったことに起因している。

特に、同一の氏名・生年月日・性別を有する個人は少なからず存在し、住所まで確実に照合することにより防げた紐付け誤りが多く、氏名・生年月日・性別・住所の4情報による照合を行わなかったために、誤ったマイナンバーを紐付けることとなってしまった。

このため、第一に、各制度所管省庁は、各種制度の申請者にマイナンバーの記載を求める旨を明確化する省令改正やガイドライン策定を行い、制度管理者がマイナンバーの照会作業を行わずとも、確実にマイナンバーを収集できるようにする。
(以下、略)

(筆者注) マイナンバー情報総点検本部第2回(令和5年8月8日)開催
<資料1>6ページ。

年金請求書について限定して述べると、マイナンバーの総点検を踏まえた再発防止対策ということでは、前述の「対応策」でも触れられているように、まず、
①年金の裁定請求書に個人番号の記載を明確化する
そのうえで、
②記載された個人番号が正しいかどうかをJ-LISに照会して、4情報が一致するかどうかの確認する
ということになり、
今回の改正はこの方向性に沿ったもの、と認識されます。

古い様式は「マイナンバー申告書」を添付

さて、改正後の新しい裁定請求書(後述)はともかくとして、改正前の裁定請求書が、すでに送付されている場合は、どのように対応したらいいのでしょうか?
従前の裁定請求書は、基礎年金番号か個人番号か、いずれかひとつしか記入する欄がありません。
基礎年金番号と個人番号の両方を記入する欄は、ありません。

総務省のパブリックコメントの回答によれば、「すでに省令改正前において裁定請求書が送付されている場合においても、省令改正後に裁定請求書が提出される場合には、裁定請求書とは別のマイナンバー申告書に個人番号及び基礎年金番号を記載し、提出いただくことになります」と記されています。
「マイナンバー申告書」とは、どんなものなのでしょうか?
パブリックコメントの回答には、紹介されておりませんが、すでに、日本年金機構の年金事務所には配備されているということです。

「マイナンバー申告書」とは?
マイナンバーカードの表裏のコピーを添付する必要があるのか?

「マイナンバー申告書」とは、A4サイズの次のような様式のものです。
ご参照ください。

マイナンバー申告書

総務省のパブリックコメントの回答によれば、省令改正後は、マイナンバーカードの表裏のコピーを添付する必要があるのか、との質問に対して、

「今般の省令改正後は、個人番号を記載したマイナンバー申告書を提出いただくことになります。
郵送での提出を行う場合は、マイナンバーカードの写しなど番号確認及び身元確認のできる書類が必要となります(窓口受付の場合、マイナンバーカードなど番号確認及び身元確認のできる書類をその場でご提示いただければ、写しの提出は不要です。)」

との回答が記されています。

ワンストップサービスなので、
年金事務所に年金請求書を提出した場合はどうなるのか?

被用者年金制度一元化後については、ワンストップサービスが実施されています。
共済組合から送付された年金請求書(ターンアラウンド)を年金事務所に提出する場合は、個人番号の記載はどのように取り扱われるのでしょうか?
これも、総務省のパブリックコメントの回答によれば、

「第3号厚生年金被保険者期間のある組合員の方は、裁定請求書を、地方公務員共済組合等に提出する場合のほか、日本年金機構の年金事務所に提出する場合についても、個人番号及び基礎年金番号を記載いただくこととなります。
窓口受付の際に、個人番号の記載がない場合は、受付機関において、請求者本人に個人番号の提出の有無を確認した上で、各実施機関に電子回付される予定です。」

との回答です。
個人番号の記載を求めるが、個人番号を記載しなかった場合の年金事務所の窓口での応対がどうなるかについては、うーん、判然としないところがあります。
1号厚年期間と3号厚年期間のある人の場合、1号厚年期間の年金の決定については、従前通りで問題がないと認識されるのですが、3号厚年期間の年金については、「個人番号の提出 無」を確認して、地方公務員共済組合に電子回付するという取扱いになるのか・・・、このパブリックコメントの結果だけでは判然としません。

配偶者加給年金額の対象となる配偶者がいる場合の
配偶者の個人番号の記載は?

ところで、年金の裁定請求書をみると、配偶者加給年金額の対象となる配偶者がいる場合など、裁定請求書には「配偶者の氏名、生年月日、個人番号または基礎年金番号、性別についてご記入ください」と記載されていますが、ここも、個人番号および基礎年金番号の両方の記載が必要になるのか、疑問がわいてきます。

これも、総務省のパブリックコメントの回答によれば、

「配偶者加給年金額の対象となる配偶者がいる場合において、年金の新規裁定時に当該配偶者の個人番号を記載いただく必要はございません」

との回答です。

新3階部分の退職等年金給付はどうなるのか?

さて、一元化後の新しい3階部分である退職等年金給付の「退職年金決定請求書」においても、改正後は、「個人番号および基礎年金番号」の両方を記載するということになるのでしょうか?

総務省のパブリックコメントの回答によれば、「『退職年金決定請求書』においても、個人番号および基礎年金番号を記載いただくことになります」、

とのことです。

様式が変更となる主な請求書等

それでは、これまでの改正内容の記述を踏まえ、<様式が変更となる主な請求書等>をまとめておきましょう。
資料の出典は、国家公務員共済組合連合会のホームページで、それに一部、筆者が加筆しました。

厚生年金保険関係(2階部分)

・老齢厚生年金請求書(様式第101号およびターンアラウンド様式)
・障がい厚生年金請求書(様式第104号)
・遺族厚生年金請求書(様式第105号および106号)
・老齢厚生年金/支給繰下げ請求書(様式第235-1号)

退職等年金給付関係(新3階部分)

・退職年金請求書
・遺族一時金請求書
・公務障がい年金請求書
・公務遺族年金請求書

経過的職域加算額(旧3階部分)

・退職共済年金
・障がい共済年金
・遺族共済年金

については、単独の様式というものはなく、厚生年金保険の2階部分と一体的に取り扱われている。

(筆者注) :筆者が「障がい」とひらがな表記した。

パブコメの回答にある、個人番号の記載がない場合、
「不受理とすることまでは想定していない」の解釈

筆者が行ったパブリックコメントではないのですが、総務省のパブリックコメントには、次のようなものがあります。

法令上は、個人番号を記載した資格取得届書・裁定請求書を提出しなければならないこととなりますが、個人番号の記載がない場合に、年金請求手続書類を不受理とすることまでは想定しておりません。

「個人番号の記載がない場合に、年金請求手続書類を不受理とすることまでは想定しておりません」を、どう解釈するのか。

なんとも判断に困る、悩ましい回答ですが、「とりあえず、受理はするが、補正を命じて、個人番号の記載を別途求める」という趣旨なのでしょうか?
それでも、個人番号を記載した「マイナンバー申告書」に相当する届書が提出されない場合は、返戻(へんれい)するという趣旨なのか・・・。
正直、わかりません。

総務省福利課長発出の通知文の「留意事項」

総務省自治行政局公務員部福利課長が、令和5年9月29日付けで、地方職員共済組合理事長・全国市町村職員共済組合連合会理事長などに発出した総行福第200号『地方公務員等共済組合法施行規則の一部を改正する省令及び地方公務員等共済組合法施行規程の一部を改正する命令の公布等について(通知)』を読むと、「留意事項」で次のように記されています。

第3 留意事項

本改正の趣旨を踏まえ、共済組合におかれては、正確なデータ登録を行う観点から、組合員資格取得届書等に記載された個人番号に誤りがないか個人番号カードの写し等の書類により確認いただいた上で、J-LIS照会を行い、個人番号等が一致することの確認を行うこと。

通知文を読むかぎりでは、個人番号の記載のない年金請求書を受理して、万が一、紐付け誤りがあったということになると、いくら、パブリックコメントで、「個人番号の記載がない場合に、年金請求手続書類を不受理とすることまでは想定しておりません」という回答を総務省福利課が行っていたとしても、所管の共済組合では、責任の取りようがないと筆者は危惧するのですが、実務では実際どうするのでしょうか?

いずれにしても、地方公務員等共済組合法施行規程等が改正になったということで、地方公務員共済組合の組合員期間(第3号厚生年金被保険者期間)のある人が、年金請求書を提出する場合には、個人番号と基礎年金番号の両方を記載していただくことで、窓口での不要なトラブルが生じないように対応していただくのがよろしいのかな、と思います。

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実務でさまざま問題に遭遇することと思います。
現場での疑問点などを筆者にお寄せください。
(メールアドレス:naganuma@xc4.so-net.ne.jp)。
個別の回答は行いませんが、今後の本稿の執筆の参考にさせていただきます。