「肥満」「高脂血症」「高血圧」「糖尿病」は、重なると脳梗塞や心筋梗塞の危険が高まることから「死の四重奏」とも呼ばれていました。ところが近年、これらの病気は単独で発症するのではなく、多くは内臓に脂肪がたまる内臓脂肪型肥満がその入口であることが判明。内臓脂肪が蓄積している人ほど高脂血症や高血圧、糖尿病になりやすく、これらのリスクが複数重なると、動脈硬化が急速に進むことがわかりました。こうした状態を「メタボリックシンドローム」と呼んでおり、日本でも2005年に8つの学会による診断基準が設けられました(下表)。その大きな特徴は、おへそのところの内臓脂肪の面積が100cm2を超えるとメタボリックシンドロームの危険が高いとわかり、そのめやすであるウエスト周囲径を明示した点です。
内臓脂肪が問題なのは、その細胞から「アディポサイトカイン」という物質を分泌していること。アディポサイトカインには善玉と悪玉があり、内臓脂肪が標準レベルの人は善玉の働きが活発ですが、内臓脂肪が蓄積すると、逆に悪玉の働きが活発になります。悪玉は血糖を増やしたり、血管を収縮させる物質で、ウエスト周囲径が大きい人ほど、この悪玉が多く分泌されている危険があるのです。
右のグラフを見てください。現在30代男性の約4割、40〜70代では約5割がウエスト周囲径が85cmを超え、メタボリックシンドロームの危険ゾーンへ足を踏み入れています。
とはいえ、だんだんウエストは太くなってきたけれど、自覚症状がないからその他の数値はやや高めでも大丈夫だろう、そう安心している人がほとんどです。しかし、たとえそれぞれの数値は大したことがなくても、内臓脂肪が増えていて、異常値に近い数値が複数あると、加速度的に動脈硬化が進行してしまうのです。
実際に、軽度であっても、肥満・高脂血症・高血圧・高血糖のうちリスクが2つある人は、まったくない人に比べて、心血管病の発症リスクが約6倍、3〜4つ当てはまる人は約36倍になることがわかっています。*
重大な病気を進行させる原因は、「まだ大丈夫…」そんな油断と過信です。予防の第一歩は、自分のリスクに早く気づくこと。ウエスト周囲径は、そのための警報サインと考えてください。
*「肥満治療ガイドライン2006」(日本肥満学会)より