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丸森町対人保健サービス計画
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宮城県丸森町 人口:18,138人 高齢化率:28.9% 保健師数:7名
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1. 「丸森町対人保健サービス計画」策定に取り組んだ背景
2. 計画策定にあたっての保健師の位置づけ
3. 計画策定の方針
4. 計画策定の流れ
5. 情報収集の方法
6. 健康づくりの目標(スローガン)
7. 計画策定のための組織
8. 「丸森町対人保健サービス計画」における事業の柱
9. 保健事業の内容
10. 「丸森町対人保健サービス計画」の意義
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「丸森町対人保健サービス計画」策定に取り組んだ背景
   丸森町では,これまで保健事業計画を立案し,それに基づいて保健事業を展開してきましたが,事業を展開していく中で,「それが本当に住民のためになっているのだろうか」「目先の事業に追われ,場当たり的になっていないだろうか」等といった疑問が,保健部門スタッフの意識の中に生じてきていました。
 保健部門の中で,「各事業が住民のためになるよう,もう一度見直してみよう」ということになり,従来の活動を含めての見直しのポイントを,保健業務の目標の指標化・数値化とその評価に据え,計画書を目標管理手法で試みることになりました。
 そのような折,一次予防を重視した「健康日本21地方計画」がスタートし,丸森町の「健康日本21地方計画」を長期総合計画の部門計画として位置づけ,平成13年度に基本構想と基本計画を策定し,平成14年度に実施計画を策定することとなりました。
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計画策定にあたっての保健師の位置づけ
   丸森町においては,保健師がリーダー,つまり中心的な立場で計画策定を進めることができました。
 また,今回の計画立案を通して,保健所,病医院,福祉施設,商工会等,多くの関係機関の協力を得ることができました。
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計画策定の方針
   丸森町対人保健サービス計画は,住民参加による政策形成学習を基本とした,目標管理方式の計画です。
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  1.計画は住民参加型で実施
   地方計画は,丸森町の住民の健康に関する実践行動に役立つものでなければなりません。また,長期総合計画の部門計画として,町の経営方針の健康部門における具体的な計画としても位置づけられます。
 したがって,この計画は住民のナマの意見,ニーズを反映する「住民参加型政策形成手法」を用いています。
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  2.計画は目標管理方式で策定
   国の計画では,科学的な根拠に基づいた各種の指標が設定されていますが,「丸森町対人保健サービス計画」においては,これらの指標を参考にしつつ,さらに行政の有効性を評価できる成果指標を計画に盛り込み,目標年次に評価可能な計画とすることにしました。
 そのため,本計画は政策目的・目標・手段を体系的に連鎖させる「目標管理方式」で策定しています。
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計画策定の流れ
   丸森町では,「現状分析→事業目的の設定→達成目標と事後評価システムの設定→最適手段の設定」という政策立案と同様のプロセスを経て,平成12年から14年までの3ヶ年計画で計画を策定します。
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  計画策定の流れ
1) 現状分析
・地域実状を分析し,明確な課題を抽出する
2) 目的設定
・今の地域課題の構造と将来の課題から目的を設計する
3) 達成目標と事後評価システムの明示
・目的に対して評価可能な目標を設定する(期限・尺度・水準)
・評価データ入手法を明確にする
・評価にかかるコスト(費用・人員など)を計上する
4) 最適手段を選定する
・目標に対して妥当性のある手段を選択する(手段の選択基準を明確にする)
・目的,目標,手段に因果関係があり,連鎖している
5) 実施に関して態勢を明示する
・事業に関連する利害関係者を洗い出し,必要ならば事前調整をする
・役割分担,権限,指揮命令系統といった態勢をはっきりさせておく
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情報収集の方法
   地域の実情を把握・分析し,課題を明確にすべく,既存資料の分析に加え,地域住民を対象とした満足度調査等を実施しました。
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健康づくりの目標(スローガン)
  やすらぎと生きがいを創り,支えあう健康と福祉の里づくり
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   事務局や住民等から互いに案を出し合い,皆で話し合って決めました。
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  基本方針
   町民ひとりひとりが,自らの健康に関する認識を高め,「安らかに生まれ,安らかに育ち, 朗らかに働き,和やかに老いる」ことを通して,その人らしいかけがえのない人生を送ることができる。
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計画策定のための組織
   計画策定にあたり,有識者で構成する「策定委員会」と,住民と関連組織,行政の実務者からなる「検討委員会」を組織し,それぞれが役割を分担することにしました。誰もが理解して評価してもらえるような保健事業活動の実践に向けて大切なことは「住民のニーズをどのようにしてつかむか」であると考え,検討委員会への住民参加を第一に考えました。
 そして,丸森町では,住民のナマの声や意見を計画に反映させるべく,真の意味での一般住民に協力を呼びかけ,8名の参加を得ることができました。ただ,一般住民が政策策定に関わるわけですから,基本的なスキルを身につけることが必要です。そこで,丸森町では,検討委員会を単に計画策定の場と考えず,同時に計画策定のための学習を並行して行いました。
 現在では,役場が働きかけなくても,住民が主体となって計画策定のための会合を開き,計画策定に向けた検討が行われています。
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  丸森町「健康日本21」地域計画策定検討委員会
   役割:行政形成の理論と実際を学習しつつ計画素案を策定
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丸森町「健康日本21」地域計画策定検討委員会のメンバー
  保健推進員代表,食生活改善推進員代表,運動推進員代表,JA女性部代表,商工会代表,事業所代表,住民代表(8名),保健福祉事務所,保健福祉課,教育委員会,病院事務長,病院医師,病院看護婦,病院管理栄養士
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  丸森町「健康日本21」地域計画策定委員会
   役割:検討委員会で策定された素案の最終意志決定
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丸森町「健康日本21」地域計画策定委員会のメンバー
 保健所長,町議会議長,教育長,中央公民館長,医師,歯科医師会,社協会長,特養施設長,公衆衛生組合連合会会長,JA,町内校長会長,PTA連合会会長,商工会会長,民生児童委員,保健推進員,食生活改善推進協議会会長,婦人会会長
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 計画の策定にあたり,シンクタンクに協力をお願いしました。ただ,シンクタンクが策定した計画書を審議するという方式ではなく,シンクタンクはあくまでのアドバイザー的な立場で参加してもらっています。
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「丸森町対人保健サービス計画」における事業の柱
  丸森町では,丸森町基本方針の目的を踏襲し,丸森町独自の柱を設定しました。
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  丸森町対人保健サービス計画事業の柱
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  A.母子保健
   親子がともに成長し,健やかな生活を送ることができる
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  B.成人・老人保健
   みんなが自分の健康に関心を持ち,共に支えあい,豊かな生活を送ることができる
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  C.精神保健
   精神的な心の悩みや問題を抱えている人が,適切な相談・医療福祉サービスが受けられ,豊かな生活を送ることができる
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  D.感染症対策
   町民が,感染症や結核にかかわることなく安心して暮らすことができる
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保健事業の内容
  A.母子保健
  最終成果
 ○合計特殊出生率を平成17年度末までに1.6に上げる(現在1.5)
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  1.妊婦が妊娠・出産を安心してできる
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  成果指標
 ○低体重児出生率を平成17年度末までに現在の9.0から7.0に下げる。
 ○妊娠,出産に対して満足する人が増える
1) 妊娠・出産を安心してできる保健,医療の充実
(1)妊産婦健康診査の実施
(2)健康教育・相談の充実
(3)訪問指導の充実
(4)関係機関との連携
2) 妊娠・出産の悩みや不安が解消するための体制の充実
(1)妊婦健康教育・相談の充実
(2)訪問指導の充実
(3)関係機関との連携
(4)育児サークルとの連携(仲間づくり)
(5)子育て支援センターの活用
(6)地区組織活動の充実
3) 母性・父性についての教育体制の推進
(1)母性・父性を高めるための講座や教室の開催
(2)関係機関との連携
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  2.安心して子育てができる
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  成果指標
 ○自主的に地域の子育てパートナーになる人が増える
 ○子育てに満足する人が増える
1) 子どもが健康に育つための保健・医療のサービスの充実
(1)乳幼児健康診査(個別・集団)の充実
(2)健康教育・相談の充実
(3)訪問指導の充実
(4)関係機関との連携(地域子どもセンター,子ども総合センター,教育委員会,子育て支援センター,学校,保育所,児童館,医療機関)
2) 子育てを地域で支えるための体制の整備
(1)育児グループの育成,支援
(2)子育て支援センターの機能の活用
(3)地区組織活動の充実(食生活改善推進員・保健推進員)
(4)ボランティアの育成・支援(託児・保育)
(5)地域支援体制のネットワーク化
(6)保育サービスの充実
3) 心豊かに育てるための学習機会の整備
(1)家庭教育に関する教室,事業の開催
(2)家族で体験,交流できる事業の開催
(3)世代間の交流事業の充実
(4)地域ぐるみで育てる意識の啓発
(5)家庭,学校,地域間の連携
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  3.心身に障害のある子や精神発達面で問題のある子がその子らしい発育・発達ができるようにする
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  成果指標
 ○障害のある子と親の社会活動参加数が増える
 ○障害児に関してのボランティア数が増える
1) 障害の早期発見,相談の充実
(1)乳幼児健康診査の充実
(2)乳幼児精神発達精密健康診査の活用
(3)発達相談,療育相談の活用
(4)訪問指導
2) 地域療育のためのネットワークの充実
(1)乳幼児育成運営会議の開催
(2)幼児,学童の調整チームの開催
(3)社会福祉協議会(ボランティア)との連携
(4)関係機関との連携
3) 家族支援の充実
(1)障害児親の会の活動支援
(2)一時あずかり事業の活用
(3)ホームヘルプサービス体制の整備
(4)障害に対する地域住民の理解,協力体制の推進
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  B.成人・老人保健
  最終成果
 ○要介護者の平均臥床期間1ヶ月未満を50%以上にする
 ○総医療費を1%下げる
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  1.介護が必要になっても,安心して暮らせるための対策
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  成果指標
 ○在宅での死亡率を10%に上げる(平成12年7.6%)
1) 地域ネットワークの強化
(1)地域ケア会議の開催
(2)関係機関との連携強化(在宅介護支援センター,医療機関,福祉関係)
2) 在宅ケアの推進
(1)総合相談窓口の整備
(2)在宅ケアサービスの供給体制の整備
(3)介護者の健康管理
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  2.日常生活に支障があっても自立した生活を維持するための対策
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  成果指標
 ○要介護・要支援者を10%減らす
1) 要介護・要支援状態にならないための保健・福祉の充実
(1)対象者の把握
(2)訪問指導の充実
(3)機能訓練事業の整備
(4)交流拡大を図る事業の整備
(5)同じ疾患を持つ自主グループの支援
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  3.病気がない人や病気があっても元気な人が健康を維持・増進するための対策
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  成果指標
 ○生活習慣病の一人当たりの医療費を1%下げる
1) 生活習慣病の予防
(1)住民の健康意識,行動の実態把握
(2)健康教育の充実
(3)運動普及活動の推進
(4)地区組織の育成
2) 生活習慣病の早期発見
(1)健康診査・各種検診の充実
(2)要指導者への事後指導の充実
3) 生活習慣病の悪化防止
(1)健康相談・教育の充実
(2)訪問指導の充実
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  4.皆で支え合える地域づくりのための対策
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  成果指標
 ○ボランティアグループの活動者数を10%増やす
1) いくつになっても役割があり,仕事ができる(生きがい対策)
(1)高齢者大学等の開催
(2)老人クラブ活動の推進
(3)生涯学習・公民館との連携強化
(4)シルバー人材派遣事業
2) ボランティア活動の推進
(1)地域で支えあう意識の啓蒙
(2)ボランティアの教育,育成
(3)ボランティア体制の整備
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  D.感染症対策
  最終成果
 ○感染症や結核の集団発生件数の低下
 ○罹患率の低下
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  1.感染症及び結核の予防,蔓延の防止対策
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  成果指標
 ○受診率の向上
 ○接種率の向上
1) 結核感染者を早期に発見し,蔓延しないようにするための検診の充実
(1)結核健康診断の実施
(2)町民の結核健康診断受診状況の把握
(3)結核検診事後指導の充実
(4)結核の啓蒙普及
2) 感染症及び結核にかからないようにするための予防対策の充実
(1)乳幼児,児童生徒に対するツベルクリン反応検査及びBCGの推進強化
(2)定期予防接種の推進
(3)接種対象者の接種状況把握
(4)住民に対しての啓蒙強化
3) 関係機関との連携体制の確立
(1)関係機関との連携強化
(2)感染拡大防止マニュアルの整備
(3)健康被害対策委員会の設置
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  C.精神保健
  最終成果
 ○精神障害者の社会的長期入院患者を減らす
 ○精神障害者の医療費を減らす
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  1.心の悩みや問題を抱えていても,その人らしい生活をできることができるための対策
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  成果指標
 ○心の悩みの相談者数
 ○自殺者の減少
1) 心の悩みや問題を抱えている人達の現状把握と早期相談の勧奨
(1)対象者の早期把握【地区組織(民生児童委員・保健推進員)との連携の充実】
(2)訪問指導の充実
2) 心の悩みや問題を抱えている人達がスムーズに相談が受けられる体制の充実
(1)早期相談の勧奨
(2)精神保健福祉相談の活用
(3)関係機関との連携・ネットワーク化の推進(医療機関,保健所,学校保健関係)
(4)総合相談窓口の整備
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  2.精神障害者の社会復帰及び社会参加のための対策
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  成果指標
 ○在宅精神障害者の社会参加者数が増える(地域・家庭の中での役割等も含む)
1) 病気が再発せずに,地域の中で自立して生活するための体制整備
(1)訪問指導の充実
(2)患者会の充実
(3)同じ障害をもつ者同士の交流(他市町)
(4)在宅福祉サービスの推進
(5)障害者の就労の場の推進
(6)関係機関との連携
2) 小規模作業所通所者の就労意欲を高めるための作業所の充実
(1)能力に応じた訓練内容の充実
(2)通所中断者の状況把握
(3)地域の人達との交流の機会の推進
(4)医療機関との連携
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  3.精神障害者への理解を深め,精神障害者をみんなで支えあう地域づくりの対策
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  成果指標
 ○家族会会員加入率を5%上げる(現在加入率9%)
 ○精神保健福祉事業に関してのボランティアの活動者が増える
1) 精神障害者を支える精神障害者家族会活動への支援強化
(1)家族会活動の充実
(2)訪問指導の充実
(3)関係機関との連携
2) 精神障害者への理解を深めるためのボランティア活動の推進及び支援強化
(1)精神保健ボランティア活動の充実
(2)地域住民への理解を深めるための啓蒙活動の推進
(3)精神保健ボランティアの体制整備
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   細かい数値目標を設定するまでには至ってませんが,各対策に成果指標を設定しています。国の指標を参考にしつつ,さらに行政の有効性を評価できる成果指標を計画に盛り込む予定です。
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「丸森町対人保健サービス計画」の意義
  丸森町にとって
space  これまでは行政主導の計画でしたが,住民が計画づくりに深く関わり,自分たちの手で策定したことで,住民の中に「自分たちの計画」(おらが町の計画)という意識が芽生えました。そして,役場が住民の意識を変えるのではなく,住民から住民に計画のことが伝わり,住民が住民の意識を変えるという効果を生むこともできました。
 丸森町の住民は,私たちが当初期待していた以上の働きを見せ,「丸森町の住民はこれだけのことができるのだ」という住民パワーを再認識することができました。
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  保健師にとって
   これまで目先の業務をこなすのに精一杯でしたが,保健業務の目標の指標化・数値化により,個々の保健師がしっかりとした目的意識を持つことができました。
 また,問題意識を地域住民と共有することで,住民のためになっているということを実感することができ,自信を持って効果的に事業を展開することができるようになりました。
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調査員:宮城県松山町 宮下 くみ子  ヘルスケア総合研究所 正代 剛一
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