ジェネリック医薬品を活用しよう

テレビや新聞などで「ジェネリック」という言葉を聞いたり目にしたりするようになりました。ジェネリック医薬品って何でしょう? 安いとは聞いていますが、信頼できる薬なのでしょうか。また、患者やその家族には、どんなメリットがあるのでしょうか。

ジェネリック医薬品って、どんなもの?

日本では「後発医薬品」と呼ばれています。ジェネリック(generic)の本来の意味は「商標登録されていない」で、開発メーカーの独占権がなくなった薬のことです。

新薬として開発された薬は特許に守られているため、開発メーカーが独占的にその薬を製造販売することができます。有効成分、効能、分量、用法など、ほかのメーカーは特許料を払わない限り、同じ薬をつくったり売ったりすることができません。

しかし、開発後25〜30年たつと特許期限が切れるため、ほかのメーカーでも同じ薬をつくることができるようになります。こうして、先発医薬品と同じ成分で、同じ効能を持ちながら、安い価格で売られるようになった医薬品が、ジェネリック医薬品(後発医薬品)なのです。

なぜ安くできるの? どのくらい安いの?

新薬がつくられるためには、成分の研究・開発に始まり、薬ができあがったあとも有効性、安全性が確認されてはじめて医薬品と認められ、発売されます。そのため、研究に10〜15年もの月日が費やされ、開発費用は150〜200億円と莫大です。また、新薬の存在や価値を広く関係者に知らせるため、宣伝や広報、営業にも経費をかけなければなりません。新薬が売られるときには薬の価格にこれらの費用がすべて反映されるため、かなり高価格となってしまいます。

ところが、ジェネリック医薬品の場合、研究・開発にかける金額が小さく、有効性や安全性はすでに確かめられていますから、承認までの手続きも少なくてすみます。そのため、価格を安く設定することができるのです。

薬の種類にもよりますが、価格は新薬の2〜8割で、平均すると5割程度です。ですから、薬がすべてジェネリック医薬品になると、薬代は約半分になります。

効果や安全性は大丈夫?

「ジェネリック医薬品は効果が少ない」という人がいるようですが、それは使用経験がない人の言葉です。ジェネリック医薬品の品質と有効性は、厚生労働省が定めた基準で先発医薬品と同等であることが確かめられているからです。

もともとジェネリック医薬品には、25〜30年の臨床経験に基づいて有効性や安全性が高い成分が採用されています。しかもその上できびしい試験を通って、承認されています。ですから、発売されたばかりの新薬よりも安全性が高いのです。

もちろん医薬品ですから、副作用がないということはありません。ジェネリック医薬品の副作用も、新薬の副作用と同様、医師や薬剤師にあらかじめどんな副作用のおそれがあるかを聞いておき、それらしい症状が出たら、よく相談して対処しましょう。

すべての医薬品に、ジェネリック医薬品があるの?

特許期間中の薬には、ジェネリック医薬品はありません。

新薬(先発医薬品)は、開発に莫大な年月と費用がかかるため、開発メーカーの権利が20〜25年は特許で守られています。この期間中は、他のメーカーが同じ成分の薬をつくることはできませんから、ジェネリック医薬品はありません。

つまり、病気の種類や症状によっては新薬しか効果のある薬がないということもあるわけで、患者さんに処方されている薬が特許期間が切れていない新薬であれば、それに替わるジェネリック医薬品は発売されていないことになります。

あなたが今使っている薬が新薬かジェネリック医薬品かを知りたい場合、インターネットで検索できます。

http://www.generic.gr.jp

なぜ、ジェネリック医薬品を活用したほうがいいの?

患者さんやその家族の薬代の負担が減り、家庭での医療費の節約に役立ちます。とくに、高血圧や糖尿病など慢性的な疾患では、薬代が高くかかるため、通院や服用を止めてしまう人がいますが、ジェネリック医薬品なら低価格であるため、適切な治療を無理なく続けることができます。

また、共済組合では高い新薬しか使えないと医療費がかさんで財政が苦しくなりますが、薬代が安くなると、その分が節減できます。もちろん日本全体で増え続けている医療費も、減らすことができます。

これまで活用されてこなかったのは、なぜ?

日本は、欧米にくらべてジェネリック医薬品の活用率が低いです。

日本よりも医療先進国である欧米では、ジェネリック医薬品の普及率は、数量にして処方薬全体の約50%ですが、日本では今のところ16%程度です。日本の1年間の医療費は約31兆円ですが、そのうち医薬品が約6兆円にも達していますから、もしもジェネリック医薬品の普及率が欧米並みになれば、年間約1兆円の医療費が節約できることになります。

日本でジェネリック医薬品が普及してこなかった理由は、医療保険制度自体にも問題があり、また、健康保険が公的保険であるため、医療機関の側にも患者さんの側にも、医療費を節約しようというコスト意識が弱かったためです。需要が少ないと、製薬会社もジェネリック医薬品をつくるメリットがないため、特許期限が切れた薬でも高価格のままになっているのが現状です。

どこで手に入れられるの? 薬局やネットで買えるの?

医薬品(医療用薬品)は、医師の処方箋にもとづいて、医療機関や調剤薬局で調剤されるものです。ジェネリック医薬品も医薬品ですから、医師の処方によります

つまり、ジェネリック医薬品は個人が直接、薬局・薬店などで買うことができるものではありません。もちろん、ネット販売や通信販売などでも手に入れることはできません。

また、一つの先発医薬品に対して何種類かのジェネリック医薬品があります。それは、薬に含まれる添加物などの違いで、患者さんの体質によって、効き目や副作用に差が出ることが考えられます。信頼できる薬局で、薬剤師さんによく相談して選ぶようにしましょう。

どうしたらジェネリック医薬品を処方してもらえるの?

病院や診療所で受診したとき、お医者さんに「ジェネリックという負担が少なくてすむ薬があるそうですが、できればそれを処方してほしい」と相談を。かかりつけのお医者さんがいたら、まずはその先生に相談してみましょう。薬局で薬剤師さんに相談する方法もあります。

医療機関での初診時には、診察の前にたいてい問診表をわたされるので、そこに「ジェネリックの処方を希望します」と書き込むのもよいでしょう。また、共済組合から配布する「ジェネリック医薬品希望カード」を診察券と一緒に受付に提示したり、あるいは薬局でもカードを提示してジェネリック医薬品を希望する意思表示をしましょう。
カードは6枚つづりになっていますので、ご家族にもお渡しください。

厚生労働省ではジェネリック医薬品の使用を促進しています。2006年4月から、処方箋に「後発医薬品への変更可」の表記とともに医師の署名があれば、ジェネリック医薬品への変更ができるようになりました。患者さんの側でもコスト意識を持って、積極的にジェネリック医薬品の活用に努めましょう

ジェネリック医薬品の品質を守る「品質再評価」

1998年から、ジェネリック医薬品の品質を確保するために品質の再評価が実施されています。これは、審査基準を明らかにし、第三者がいつでも同じ検査方法で品質のレベルを追試して品質評価し、公表できる制度です。また、品質再評価の結果は「医療用医薬品品質情報集(日本版オレンジブック)」にまとめて公開されていますし、ホームページ上でも確認できます。