感情的に叱る前に、まずは理由を聞いてみる

片づけてくれない子どもに対して「いい加減に片づけて!」
納期を守らない部下に対して「今週中にできるって言ったよね!?」
こんな言い方で、理由を聞かずに相手を叱ってしまうことがあります。
しかし、それではお互いの関係がギクシャクするだけで、根本的な問題解決にはつながりません。

夫婦共働きで、保育園に通う娘さんをもつ女性Aさんの話

私が仕事から帰宅すると娘が部屋中に人形やぬいぐるみを並べ、さらにそれらの上からタオルやハンカチなどをかけて、床一面に散らかしていました。私は毎日退社後にダッシュで帰宅、すぐに夕飯の支度、お風呂、洗濯、寝かしつけなどで忙しくて手一杯なので、部屋はできるだけ散らかさないでほしい。なのに、何度片づけても次の日も同じことをするので、思わず「いい加減に片づけて!」と叱ってしまいました。

すると、夫から「あれはね、保育園のお昼寝の時間を再現しているんだよ。お姉さんになった気分で、お人形さんやぬいぐるみを寝かしつけているみたいだよ」と言われ、私は「ああ、そうだったのか。自分のことすらまだちゃんとできないのに、一人前に“お姉さん”の気持ちで寝かしつけをしていたのね」としみじみとした気分になりました。

そして、子どものやることは大人から見ると、“なんで散らかすの?”“なぜ親の言う通りにしないの?”と思うことが多いけれど、子どもには子どもの理由があるんだなぁと反省しました。“何をしているの?”と聞いてあげれば、お昼寝の時間の再現だと教えてくれただろうに。これからは、もっとちゃんと子どもの言い分、考えを聞いてみようと思いました。

case1 部下が顧客先を訪問した際、伝えるべきことを伝えていなかったとわかったとき

「なんで、ちゃんと〇〇の件、話してこないの?」「今日、あの話、する予定だったでしょう?」とつい責める口調で言いたくなります。

まずは理由を聞いてみる!

上司「何か理由があって話さなかったの?」
部下「お話しようと思っていたら、途中で部長が別の会議があると退席されたんです。部長がいらっしゃるときのほうが話を先に進めやすいと判断したので、今日は言わずに帰ってきました」

上司「なるほど、そういう判断があったのならいいけど、近々、部長がいらっしゃる時間を押さえて、できるだけ早く、直接お伝えするようにね。遅くなると色々こじれる可能性があるから」

case2 今週中締切で後輩に依頼していた資料が間に合わず、「納期を週明けまで延ばしてほしい」と後輩が言ってきたとき

「今週中にできるって言ったよね!?」「来週になると全体のスケジュールもずれちゃうんだけど、ちゃんと計画的に仕事したの!?」とつい叱りたくなります。

まずは理由を聞いてみる!

先輩「どういう理由で納期が遅れたのか説明してみて」
後輩「他部署から急ぎで対応して、と言われた別案件に追われて、先輩からの指示分が後回しになりました」

先輩「そういう理由があったのね。でも、自分の判断で優先順位を変えたり、納期遅れを発生させたりせずに、予定がずれ込みそうだとわかった時点で、相談してくれればいいんじゃないかな」

相手の行動を理解しようとすれば、お互いの関係が深まる

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頭ごなしに叱られると、叱られた側は「防御」の態勢に入り、黙り込む可能性があります。また、叱られた側は失敗を恐れてしまい、積極的な行動がとれなくなってしまうことも考えられます。叱った側も「言いたいことを言う」だけで、根本的問題は何も解決しません。そうなると、何が本当の問題なのか、今後どうすればよいのかが、お互いにわからなくなります。

人がとった行動には必ず理由があります。言いたいことがあっても、まずは、相手の行動の理由や背景に耳を傾けること。そうすればより的確なアドバイスができ、きっとお互いの関係も深まるでしょう。

田中 淳子(たなか じゅんこ)

グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。1986年日本DEC入社、IT技術教育に従事した後、コミュニケーションなどビジネススキル教育を手掛けるようになる。1996年から現職。著書に『はじめての後輩指導』(経団連出版)、『現場で実践!若手を育てる47のテクニック』(日経BP社)など。

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