相手の声が聞こえているのに言葉として理解できないなどの困りごとがあるにもかかわらず聴力検査では異常が見つからない、という「聴覚情報処理障害(APD)」。「聞き取り困難症(LiD)」とも呼ばれる障害です。
言葉が聞き取りにくくなる状況は人によって異なります。例えば、子供なら教室、大人なら飲食店など雑音下だと相手が何を言っているか分からない、複数人での会話が困難、電話越しの声が聞き取れないなど。
APDは、聴力とは別に脳の機能に何らかの問題が生じている状態とされていますが、研究段階で明確な原因や治療法は分かっていません。認知度もまだまだ低く、本人が気付いていない場合もあります。上手く聞き取れない自分を責め、さらに周囲からも誤解されることで、うつ傾向に陥ることも。まずは、詳しい検査が可能な専門の医療機関を紹介してもらい、診断を受けましょう。
環境を整えることで聞き取りにくさをカバーできるケースもあります。可能であれば周囲の人にAPDや聞き取りにくい症状について伝え、大切な話は1対1で行う、電話よりメールを使用する、静かな席へ移動するなどの対策ができないか、相談してみるとよいかもしれません。
回答者:阪本浩一 大阪公立大学 大学院医学研究科 耳鼻咽喉病態学 准教授