暑さなど明確な理由がないのに、体の一部分から多量の汗が出る局所多汗症。この病気で困ることは、汗で濡れて書類が破れる、電子機器が不具合を起こす、汗染みが気になり好きな服を選べない、汗を指摘されるのではないかと不安になるなど、多岐にわたります。
局所多汗症は、一般的にあまり知られていないため、周囲だけでなく本人も病気と認識していないこともあります。しかし、長期的にみると就職や結婚といった人生のあらゆる岐路での決断に影響を与えたり、不安やうつの原因となったりする可能性があるため、「たかが汗」と軽視できない病気です。
治療法は、塗り薬や飲み薬、水道水に浸した患部に微量の電気を流すイオントフォレーシス療法、注射の他、最終的な手段として外科手術などがあり、部位や症状、副作用を考慮して適したものを選びます。たくさん汗をかいていても困っていない場合は、治療の必要はありません。
日常生活に支障が出ていない場合でも、内分泌代謝疾患や神経障害など別の病気の症状として過剰な発汗が引き起こされている場合があるので、大量の汗が出る時は、一度皮膚科専門医を受診することをおすすめします。
回答者:室田浩之 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 皮膚病態学 教授