監修:寺本民生(帝京大学臨床研究センター センター長)

「肝臓病」とは

肝臓病とは、肝臓の機能がうまく働かなくなる病気の総称です。肝臓はアルコールや薬・老廃物などの分解・解毒、脂肪の消化・吸収のため胆汁をつくる、分解・吸収した栄養素の貯蔵・合成など、たくさんの働きを行う、体の化学工場のような臓器です。
肝臓の働きが正常に機能しなくなると体中に影響し、放っておくと死に至ることもあります。

検査の基準値。1 基準範囲 AST〈GOT〉ALT〈GTP〉 30U/L以下 γ-GT〈γ-GTP〉 50U/L以下、2 保健指導判定値 AST〈GOT〉ALT〈GTP〉 31~50U/L γ-GT〈γ-GTP〉 51~100U/L、3 受診勧奨判定値 AST〈GOT〉ALT〈GTP〉 51U/L以上 γ-GT〈γ-GTP〉 101U/L以上。※特定検診における基準値

なぜ肝臓病になるの?

健診で見つかる肝臓病の主な原因はアルコールや、肥満・糖尿病などの生活習慣病が起因となる脂肪肝などです。近年はお酒を飲まない人の非アルコール性脂肪肝も増えています。また、薬物性や自己免疫性の肝臓病、中高年ではウイルス性肝炎も多くあります。
いずれの場合も放置して重症化すると肝炎⇒肝硬変⇒肝がんへと重症化することがあり、早めの対処が大切です。

こんな習慣が肝臓病を招く!運動不足。食事のバランスが悪い。アルコールに強く、お酒が好き。お酒を飲む機会が多い。薬やサプリメントを常用。たばこを吸う。睡眠不足。

肝臓病の何が問題?

肝臓病は症状が出にくいですが、肝機能が低下すると解毒作用が低下して脳に障害(肝性脳症)が出たり、血液や胆汁の流れが悪くなったり、血管が破裂(食道静脈瘤など)したりと、体中に悪影響が出ます。
予防には原因となる生活習慣の改善が必要です。特にアルコール・過剰な薬・サプリメントなどの摂取は、肝臓の負担を大きくします。また、肥満は改善し、肝臓病以外の持病がある人は治療をきちんと受けることが大切です。

健診での肝機能検査でわかる主な病気。AST>ALT 疑われる主な病気 肝硬変、肝臓がん、心筋梗塞、進行性筋ジストロフィーなど。 AST<ALT 疑われる病気 慢性肝炎、劇症肝炎の後期、脂肪肝、急性胆嚢炎など。 両方高い場合:急性肝炎、アルコール性肝炎。 γ・GT アルコール性肝障害、薬剤性肝疾患など。 ASTは体の様々な組織に、ALTは主に肝臓にある酵素で、どちらが高いかによって肝臓病以外にも、心臓や筋の病気の診断にも用いられます。
検査結果別 体の化学工場を無理なく使い続けるために

はじめに肥満をチェック!

■肥満(BMI*25以上)の人は減量を。
体重の3%前後の減量で改善の見込みがあります。
*BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
■あなたの体重の3%は?
現在の体重kg × 0.03 = あなたの3%kg
基準範囲の人は、アルコール摂取を控えめに。禁煙し、お酒は適量を守ろう。主食・主催・副菜をバランスよくとる。空腹のまま飲酒しない。お酒は適量の範囲で。お酒は水分と一緒に。薬やサプリメントをむやみに飲まない。禁煙する。意識して歩いたり体を動かしたりする。一度は肝炎ウイルス(HBs抗原・HCV抗体)検査を受け、結果を記録しておく。保健指導判定値の人は、より積極的な生活習慣の改善を。自分にできそうな目標を立て、毎日の生活状況を日記やメモに残すとなお効果的です。慢性のウイルス肝炎の場合は、症状がなくても定期的な受診での経過観察が必要です。野菜や豆類、きのこ、海藻、未精製の穀類などを積極的にとる。脂っこいものや脂肪分の多いもの、塩分の多いものは控えめに。原則禁酒し、どうしても飲むときは適量を厳守する。医師に相談の上、適度な運動をする。過剰な薬やサプリメント、健康食品をとらない。寝酒を習慣にしない。疲れをためないよう、適度に休養を取る。受診勧奨判定値の人は、肝臓病の原因や進行度によって、治療の選択肢は異なります。原因や病状ごとに日常生活の注意点は異なるので、継続的な受診で医師や管理栄養士などに相談を。生活習慣の改善も確実に行い、重症化を防ぎましょう。肝炎ウイルスへの感染が分かった場合は詳しく調べるため、まずは受診しましょう。
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