監修:寺本民生(帝京大学臨床研究センター センター長)

「腎臓病」とは

腎臓の機能が低下した状態をまとめて「腎臓病」といいます。
腎臓は血液から老廃物を取り除いて尿をつくるほか、血圧のコントロールやホルモンの分泌など多くの役割を持っていますが、年を重ねると徐々に機能が低下していきます。
年齢相当より急激な腎機能低下を放っておくと、慢性腎臓病(CKD)になり、体外に排出すべき老廃物が血液中に増えたり、尿が出なくなったりと進行していきます。

検査の基準値。1 基準範囲 尿蛋白 (―) eGFR 60㎖/分/1.73㎡以上 血清クレアチニン 男 1.00㎎/㎗以下 女 0.70㎎/㎗以下、2 保健指導判定値 尿蛋白 (±)(―) eGFR 45~59㎖/分/1.73㎡ 血清クレアチニン 男 1.01~1.29㎎/㎗ 女 0.71~0.99㎎/㎗、3 受診勧奨判定値 尿蛋白 (2+) eGFR 45㎖/分/1.73㎡未満 血清クレアチニン 男 1.30㎎/㎗以上 女 1.00㎎/㎗以上

なぜ腎臓病になるの?

細い血管の集合体のような臓器ですので、血管が傷つく「動脈硬化」の影響が大きく現れます。生活習慣病(特に糖尿病や高血圧)は腎臓病と深く関係しています。
このほか、免疫異常などに関係する腎臓病もあります。

こんな習慣が腎臓病を招く!塩味の濃いものをよく食べる。麺類の汁をほとんど飲む。野菜や果物をあまり食べない。あまり歩かない。スポーツや運動の習慣がない。喫煙や過度の飲酒。痛み止めの薬などの常用。

腎臓病の何が問題?

腎臓病は多くの場合、初期には症状がありません。糖尿病や高血圧など、生活習慣病のコントロールがうまくいかずに悪化することが多く、悪化すると糖尿病合併症や心臓病、脳卒中を引き起こすことが知られています。
これらは急死や身体・生活の不自由を招きます。また腎臓病は一度傷つくと元の機能に戻れず、人工透析が必要になるケースがあることも問題です。

腎機能低下の引き金となる生活習慣病 悪い生活習慣 食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足、ストレスなど。生活習慣病 肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドロームなど。生活習慣病の重症化!糖尿病合併症/脳卒中/心臓病など⇔CKDの重症化 腎障害→腎機能低下→末期腎不全
検査結果別 傷つくと戻れない腎臓をいたわろう

はじめに肥満をチェック!

■肥満(BMI*25以上)の人は減量を。
体重の3%前後の減量で改善の見込みがあります。
*BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
■あなたの体重の3%は?
現在の体重kg × 0.03 = あなたの3%kg
基準範囲の人は、バランスのよい食事を心がけ、特に塩分を控えめに。お酒は控えめにし、禁煙がおすすめです。薄味と腹八分目を心がける。主食・主催・副菜をバランスよく。水分は十分にとる。お酒は控えめに。禁煙する。排尿を我慢しない。意識して歩いたり体を動かしたりする。保健指導判定値の人は、より積極的な生活習慣の改善を。自分にできそうな目標を立て、毎日の生活状況を日記やメモに残すとなお効果的です。汁物は具沢山にし、汁の量を減らす。麺類の汁は飲まない(汁100㎖で食塩約1g)。パンやうどん、練り物など、意外な塩に注意。食卓で使う調味料は、小皿にとってっ少量つける。お酒はなるべく飲まない。たんぱく質をとり過ぎない。過剰な薬やサプリメント、健康食品はとらない。かぜなどを予防し、適度に休養を取る。血圧測定と記録を習慣にして保健指導の参考に。医師の相談の上、適度な運動を。受診勧奨判定値の方は、病状が進むほど、生活習慣の管理が厳しくなります。野菜や果物、たんぱく質、水分など、異常のない人には推奨されるものが制限されるようになることも特徴です。人工透析が必要になるほど重症化すると、生活上の負担が大幅に増えてしまいます。医師や管理栄養士などに相談し、継続的に受信しつつ、生活習慣の改善も確実に行い、重症化を防ぎましょう。※人工透析は週に3回の施設での透析や在宅での腹膜透析または血液検査などの方法から選択する。
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