この夏、必読!酷暑対策

東京の8月の気温平均値

平均気温は主要都市を中心に
上昇傾向に!
例えば東京の場合、1913 年の23.8℃から2012 年には29.1℃になり、100年間で5℃以上も上がっています。熱中症は30℃を超えると激増といわれるだけに、十分な対策が必要です。

5つのダメージがあなたにふりかかる!!

 連日の猛暑、さらに多湿というストレスも加わり、夏に心身にかかる負担は想像以上。特に都市部ではヒートアイランド現象で、30℃以上の真夏日が年々増えています。
 こうした過酷な環境の中で、まず注意したいのは熱中症と強い紫外線。また、冷房の効いた屋内と外気の温度差も心身の疲れに拍車を掛けます。油断をしていると、脳や内臓、筋肉など体の大切な機能が次々とダメージを受けて、いつの間にか〝満身創痍(そうい)〟の状態になっている…。それが夏の落とし穴です。
 加えて夜は熱帯夜。よく眠れなければ、疲労を回復することができず、全身の機能は低下する一方です。

暑いと汗をかき、さらに血液を肌表面に集めて熱を発散しますが、血液が肌に集中するぶん、脳や筋肉などの血液量が不足して、さまざまな症状が現れます。

近年はオゾン層の破壊により地上に届く紫外線がますます増加。特に夏の間は照射量が多くなります。

人間が急激な温度変化に対応できるのは5℃以内。暑いからと冷房が効いた室内で過ごしていると体温調整機能が乱れてきます。

脳、目、肌、胃腸、筋肉のダメージ

 脳への血液が不足すると、めまいや吐き気、頭痛などの症状が現れます。そのまま放置していると意識障害につながる危険があります。また脱水状態が続けば血液の粘度が高まり、脳血管が詰まりやすくなります。

 多く浴び過ぎると、角膜を痛めたり、水晶体が濁って視力が低下する白内障の原因になったりします。

 紫外線が肌の中のコラーゲンを壊したり、活性酸素を発生させたりして、シミやシワ、たるみなどの老化を促します。

 胃腸の消化・吸収力が落ちているのに、ついスタミナをつけようと暴飲・暴食になりがちです。そんな食事を続けていると、疲れ気味の胃腸はフル活動でクタクタになります。

 汗によって、筋肉の収縮・弛緩に関わっているミネラル類が失われやすく、こむらがえりが起こることも。また冷房病も、体を冷やして血流を低下させてしまうため、筋肉に必要な栄養や酸素が届きにくく、疲労物質がたまりやすくなります。

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熱帯夜が昼の疲れを増大

熱帯夜が昼の疲れを増大

 連日28℃を超える夜が続くと、寝苦しく睡眠不足に。つい冷房に頼ってしまいがちですが、寝ている間に体温が奪われて、かえって体力を消耗してしまうことに。これでは疲れをとるどころか、逆にためこむ一方です。
 同じ28℃でも、寝具を麻など熱がこもりにくい素材にする、エアコンの除湿機能で湿度を60%以下にするといった工夫だけで体感温度はずいぶん違います。扇風機で微風をつくり室内を循環させるのもひとつの方法です。

エスニックの知恵に学ぼう!

 暑い夏を健康に乗り切るには、疲れをためないこと、そして必要な栄養をしっかりとって体力をつけることが必要です。
 その大きなヒントになるのが、タイやベトナムなど、日本以上に高温多湿の環境で暮らす東南アジアの人たちの食生活です。野菜や香辛料、ハーブ、スパイスなどをふんだんに使ったエスニック料理は、ヘルシーで栄養バランスもよく、酷暑に打ち勝つための知恵がたくさん詰まっています。日本でも手に入る食材が多いので、上手に食卓にとり入れると、夏を元気に乗り切る大きな力になります。
 また暑い時期は水分が失われやすくなります。渇きを感じたときには、すでに脱水症状は始まっているといわれています。
喉が渇く前の段階で、早めに水分を補給することをお忘れなく。

ハーブ

 疲れたり食欲が落ちたりしたときは、強力な香味のあるバジルやパクチー、酸味のあるレモングラスなどのハーブを使った料理を。爽快な風味が疲れた脳を癒やし、食欲中枢を刺激して胃液の分泌を促します。
 また、これらのハーブの香りや色素には抗酸化成分が含まれているものが多く、紫外線による活性酸素のダメージから目や肌を守ってくれます。肉や魚、大豆、卵など、エネルギーの代謝に必要なアミノ酸やビタミンB群が豊富な食材と合わせると理想的。代謝がアップすると筋肉の疲労もたまりにくくなります。独特の香りが苦手なら、大葉やみょうが、しょうが、さんしょうなどを利用しましょう。

パクチー(香菜)の爽やかな香りに、頭も胃腸もスッと目覚めます。大葉やニラ、にんじんなどの野菜もふんだんで、ビタミン・ミネラル類もしっかり補えます。

発酵食品

 タイではナンプラー、ベトナムではニョクマムと呼ばれる「魚醤」は、魚を発酵させた調味料。またインドネシアには大豆を発酵させたテンペという日常食があり、これらの発酵食材は、腸の中の善玉菌を増やして腸内環境を整え、老廃物の排出に役立ちます。
 また腸内の免疫細胞が活性化し、さまざまな病気に対するガード力も高まります。身近な納豆やヨーグルト、キムチなどの発酵食品も、ぜひ積極的に食卓に。

ナンプラーの効いた海老スープにハーブも多用。爽やかな辛味と酸味がからみ合った深い味わいが魅力。しょうがも加わり、排せつ力を後押ししてくれます。

カレーandスパイス

 トウガラシやチリペッパー、カレー粉など、辛いものを食べると汗をかきやすくなります。汗をかくことは、血行をよくして新陳代謝を高め、体温調整機能の維持につながります。また、トウガラシのカプサイシンにはアドレナリンの分泌を高める働きがあり、エネルギー代謝も活発に。
 さらに、カレー粉のターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンという成分は、肝臓の働きを助ける作用のほか、ストレスの軽減や記憶力の維持など、脳への働きも注目されています。

辛味の強い青トウガラシとグリーンペッパーなどのスパイスの働きで、新陳代謝がアップ。ほんのり甘いココナッツミルクとのハーモニーが後を引きます。

朝の野菜スムージー

 夏の朝、ビタミンやミネラル、食物繊維がたっぷりの野菜スムージーで、体を元気に目覚めさせましょう。
 夏は生野菜も傷みやすいので、新鮮なうちにひと口大に切り、ビニール袋に入れて冷凍しておくのがコツ。必要な分をミキサーに入れ、お好みでハチミツやレモン汁を加えてまわせば出来上がりです。
 野菜は、トマト、きゅうり、パプリカ、セロリ、ゴーヤ、オクラ、ほうれんそうなどお好みで。皮や茎も丸ごと入るので栄養的にも無駄がなく、忙しい朝でも手軽に続けられます。

監修:順天堂大学大学院医学研究科 加齢制御医学講座教授・医学博士 白澤卓二(しらさわ たくじ)

1958年神奈川県生まれ。千葉大学医学部卒業。アンチエイジング、健康長寿研究の第一人者。『100歳までボケない101の方法』(文藝春秋)、『僕は老けるのをやめた! 100歳まで輝くために、始めたことやめたこと』(メディアファクトリー)、『50歳から始める「若返りの食卓」』(日東書院)など著書多数。

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