冬が来る前に、免疫力の強化を 今年も手ごわい かぜ・インフルエンザ!

暑い夏が終わり、過ごしやすい秋が来ると、 身も心もホッとします。
しかし、この一息が落とし穴。 夏の疲れがどっと出て、 体力も抵抗力も低下しがちです。
一方、空気が冷えて乾燥してくれば、ウイルスの活動はどんどん活発に。
守りが弱くなったところに強い敵が現れたら苦戦は必至です。
だからこそ、一足早く免疫力を強化して、ウイルスに負けない体をつくっておきましょう。
かぜ・インフルエンザとの戦いは、もう始まっています。

免疫力のカギを握るのは全身を巡回するリンパ球

免疫細胞たちはこうしてウイルスから体をガードしています!

体内に病原体が侵入
待ち構えていた「緊急防衛部隊」のマクロファージや顆粒球が飲み込んで殺す
しかし、それを逃れて侵入してきた敵がいれば、樹状細胞がその情報を収集
「パトロール部隊」が集まる近くの基地(リンパ節)に届ける
キラーT細胞は敵が侵入した現場に急行。一方、B細胞は敵の活動を抑える抗体をつくる
キラーT細胞は敵のウイルスに感染した細胞ごと破壊。あとから同じ敵がやって来たら、B細胞が抗体ですぐに攻撃して退治

免疫システムには、緊急防衛部隊とパトロール部隊がいる

 免疫力があるとかないとか、よくいいますが、免疫力を決めているのが、実は体内の白血球たちの働きです。
 白血球は1種類ではなく、右に示したようにさまざまな免疫細胞の総称で、緊急防衛部隊の役割を担う免疫細胞たちは、鼻やのど、腸管などの粘膜や皮膚で、敵の侵入を阻止しようと働きます。ところがウイルスは極小サイズのため、この緊急防衛部隊の目を逃れて体内に侵入してきます。そこで防衛のカギを握るのが、パトロール部隊ともいえるリンパ球たち。連携しながら侵入した敵を攻撃します。かぜをひくと熱が出て、のどや脇の下などが腫れるのは、彼らが体内で敵と戦って起こしている炎症です。

生活習慣が強く影響する免疫力

 寝不足だったり、疲れがたまっていたりすれば、免疫力が下がります。免疫細胞たちの働きは、思っている以上に生活習慣の影響を強く受けています。
 そこで免疫力を強化しておくためには、まず生活を見直してみましょう。そして、下に挙げた3つのポイントをしっかり実践しておきましょう。

リンパ球がきちんと働く体をつくろう!

決め手1 バランスのよい食事と十分な睡眠は基本の"き"

 特に免疫細胞の材料となる良質のたんぱく質と、その活動を助けてくれるビタミン類は過不足なくとりましょう。そして、睡眠をしっかりとれば、眠っている間に元気なリンパ球がたくさんつくられます。

決め手2 リンパ球の敵・ストレスを上手にコントロール

 ストレスがかかると、体内で増えるストレスホルモンがリンパ球の働きを抑制します。秋の夜長に、入浴などのリラックスタイムで心身の緊張をほぐし、ストレスを和らげましょう。

決め手3 予防接種で免疫力を増強する

 リンパ球のB細胞は1度侵入したウイルスを記憶して、次に侵入されたときには、より早く強い抗体をつくる特性があります。予防接種は病原性を取り除いて無毒化するか、ごく弱くしたウイルスを体内に入れ、あらかじめ強い抗体をつくっておくための知恵。本物のウイルスがやって来ても、強い抗体で攻撃できるので、発症を防いだり軽く済ませたりすることができます。

監修:兵庫医療大学薬学部 医療薬学科 生体防御学教授・薬学博士 田中稔之(たなか としゆき)
1984年東北大学薬学部卒業、1989年東北大学大学院薬学研究科修了後、大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター臓器制御学研究部助手、1999年大阪大学大学院医学系研究科・バイオメディカル教育研究センター臓器制御学研究部助教授等を経て、2007年より現職。

インフルエンザ予防対策

感染の仕組みと主な症状

インフルエンザの症状

 インフルエンザの主な感染ルートは、くしゃみや咳などの飛沫によって感染する飛沫感染、屋内で飛び散ったウイルスが空気中に漂って感染する空気感染、ウイルスが付着したものに手で触れて目・鼻・口などから感染する接触感染の3つです。
 インフルエンザに感染すると、一般的なかぜの症状に加えて、急な発熱や筋肉痛・関節痛などの全身の症状が強く現れます。「あれ?もしかして…」と思ったら、早めに医療機関を受診しましょう。

特に注意が必要な人

 子ども・高齢者・妊娠中の人・持病がある人は、抵抗力が弱く重症化する傾向にあります。子どもは中耳炎や気管支炎を起こすことがあり、インフルエンザと気付かれずに悪化させてしまうケースがあります。高齢者はインフルエンザの症状が出にくいため、急に元気がなくなる・食欲がなくなるといった症状に要注意。妊娠中の人・持病がある人は、感染した場合の対応をかかりつけ医などに相談しておきましょう。

予防接種はお早めに!

 インフルエンザの流行期は、例年12月下旬から3月上旬くらいで、春になると徐々におさまっていきます。流行期に備えるためには、10月中旬から12月上旬くらいまでに予防接種を受けるのが理想的です。

予防接種期間の目安

ウイルスには近づかない&寄せつけない!予防の3大原則

マスク
高度の医療用マスクは不要ですが、薬局などで市販されている不織布製マスクの着用を。せきやくしゃみが出るときの着用は、人にうつさないための、人にやさしいエチケットです。
手洗い

特に外出から帰ってきたときや食事の前などは、指の間、爪のすき間・指先・手の側面も丁寧に

石けんと流水で、しっかり洗いましょう。石けんで手が荒れやすい人などは、石けんを使っている気持ちで丁寧に洗いましょう。童謡の一番を歌うくらいの時間が、十分な手洗いに必要な時間です。
うがい
始めはブクブクとうがいをし、次に顔を上に向けてガラガラとうがいをし、のどの奥まできれいにしましょう。

くわしくは下記ホームページで

厚生労働省
● インフルエンザQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/
kekkaku-kansenshou01/qa.html

国立感染症研究所感染症情報センター
● インフルエンザQ&A
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/
fluQA/index.html

日本医師会
● インフルエンザQ&A
http://www.med.or.jp/jma/influenza/

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