動脈硬化は内腔の狭さより
血管壁のプラークが怖い
 「動脈硬化」が進行すると、血管の狭くなった部分に血栓が詰まり、怖い心筋梗塞や脳梗塞のもとになるのは、ご存じの通りです。

 一般的には血管の内腔が狭くなっているほど血管が詰まる危険性が高いと思われていますが、実はそれより血管を狭くしているプラークが破れやすいかどうかのほうが重要なリスクだということがわかってきました。血管の壁を膨らませているプラークの中身は、コレステロールや白血球の死がいなどが混ざったヘドロ状の堆積物ですが、同じプラークでも、破れやすい不安定プラークと破れにくい安定プラークがあります。

 せまくなった血管安定プラークであれば、血管の9割近くまで塞がっても、残り1割の細くなった内腔を血液ががんばって通っていきます。ところが、不安定プラークの場合は3〜4割の閉鎖でも、急激に血圧が上がったり大きなストレスがかかったりすると、突然破裂する危険があります。するとどうなるか? 敗れた血管壁を修復しようと血小板が一気に集まってきて、それが凝集して血栓になり、血管に詰まってしまうのです。

 実は、近年見られる心筋梗塞や頚動脈に起因した脳梗塞の多くのパターンがこれです。
動脈硬化を促進する超悪玉の小型LDL
 そこで、不安定プラークができていないかが最も気になるところだと思いますが、一般健診や血管撮影などでこれを見つけるのはほとんど不可能です。

 ただし、不安定プラークのリスクを推測する目安はあります。それが「中性脂肪値」です。近年の研究から総コレステロール値やLDLコレステロール値が正常でも、中性脂肪値が高いと善玉のHDLコレステロールが減って、LDLコレステロールが小型化していることがわかってきました。活性酸素が小型のコレステロールを酸化させているようです。この酸化した小型LDL(スモールデンスLDL)は血管内にある時間が長く、血管壁がちょっとでも傷ついていると、入り込んでプラークを形成し、破裂しやすい不安定プラークができるのです。

 LDLコレステロール値が正常なので動脈硬化の心配は少ないと思っていた人が心筋梗塞で突然死。そんなケースを調べてみると、スモールデンスLDLが多かったという報告もされ始めています。

 動脈硬化の予防に、LDLコレステロール値ばかりを気にしがちですが、中性脂肪が“超悪玉”のスモールデンスLDLを増やす黒幕だということを忘れてはいけません。中性脂肪を増やさずに、同時に余分なコレステロールもためない注意を。下のチェックテストのどれにもチェックが入らない生活を心掛けることこそが突然の“梗塞事故”から自分を守ります。
こんなリスクに心あたりはありませんか?
あぶらっこい料理や甘い物が好きで、野菜はあまり食べない
毎日お酒を飲む(日本酒2合以上、またはビール中ビン2本以上)
毎日たばこを吸っている
運動はほとんどしない
血圧や血糖値が高めといわれたことがある
コレステロール値や中性脂肪値が高めといわれたことがある
20歳のときより体重が10kg以上増えた

【判定】
チェックの数が
1… ひとまず安心。定期的な健診でこの状態をキープしましょう。
2〜3… 要注意。このままでは血管の老化が早まる恐れが。すぐに生活習慣の改善を。
4以上… 加速度的に動脈硬化が進行している危険性が。早急な受診をおすすめします。