「粗探し」をする自分がイヤ

誰

かと会えば、その人の悪いところばかりをチェック。職場の同僚や家族、友人に対して、嫌いなわけではないのに粗や欠点ばかり探してしまう。なぜ、人は「粗探し」をするのでしょうか。

「粗探し」のルーツは原始時代まで遡ります。原始時代は、食料や縄張りの争いが激しく、原始人同士で殺し合うこともありました。したがって、原始人が最も怖れたものは、トラでも熊でもなく「人」でした。そもそも人は、本能的に人の粗や欠点を探して、「あいつはたいしたことがない」「自分より劣っている」と認識することで、安心しようとする生き物なのです。

しかし、現代において過剰な粗探しはマイナスです。粗探しがエスカレートすると、自分も他人から粗探しをされているのではという被害妄想が強くなります。些細なことでも悲観的になり、粗探しを続ける自分自身が一番の敵となります。

そうなる前に心掛けたいのが、「不安のムダ遣い」をやめること。現代人は、お互いにそこまでの敵意を持っているわけではありません。だから、他人の視点に対して不安でいるよりも、他人の良い点を探そうと意識したほうが気持ちにも余裕が生まれます。

インターネットと距離を置くこともオススメです。ネット上では「匿名」で情報を発信できるため、ネガティブなことを言いやすく、言ったことに対しての反撃の危険がありません。普段では絶対使わないような攻撃的な言葉、嘘の情報もあふれています。「見ているだけ」と思っていても、無意識のうちに心は不安定になり、人の欠点を見つけて安心したい、攻撃したいという欲求が強くなります。「夜9時以降は見ない」など、自分なりの方法でネットと距離を置いてみると気持ちが少し楽になるはずです。

では、身近に粗探しをする人がいる場合はどうすればよいでしょうか。粗探しをする人は常に粗探しをしているわけではなく、エネルギーを消耗しているときに、不平不満を言ったり、ネガティブなことに目がいったりする傾向があります。そのため、まずは相手が「弱っている」ことを認識する。次に相手から言われたことに対して、基本はスルーすること。それが難しければ、表面上は「そうですよね」とあっさり答えて、「言いたいことを言わせてあげる」ことで弱っている相手を助けているくらいの気持ちでいるとよいでしょう。

イラスト

しもぞの そうた 1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部となり、陸上自衛隊衛生学校メンタルヘルス教官としてメンタルヘルス、自殺防止、カウンセリングなどの教育に携わる。2015年退官。現在は惨事ストレスに対応するメンタルレスキューインストラクターとして活躍中。『自衛隊メンタル教官が教えてきた 自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数。

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