「八方美人」と言われてショック!

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人にその気がなくても、誰に対してもいい顔をしてしまう──。結果、周りから「八方美人」と言われて、そのことを気にしてしまうことはありませんか。確かに、八方美人には「誰にでも愛想よく振る舞っている」「自分の意見を言わない」など、マイナスイメージが先行しがちです。しかし、八方美人なことはそんなに悪いことでしょうか。

誰とでも分け隔てなく付き合えるということは、多くの人たちに対して気配りができる、つまり全方位に配慮ができる人と言えます。今こう言えば、相手が喜び、物事が良い方向に向かうなんてことを瞬時に判断するには、かなりの洞察力も必要です。何より、相手の気持ちを汲み取ろうとすることができるため、見る人から見れば「誰にでも優しく親切」と感じます。一見するとマイナスだと思える八方美人ですが、見方を変えるとプラスにもなり得るのです。

そもそも、八方美人は日本人の特性です。日本人の祖先は農耕民族であり、一人で行うと非効率な農作業は家族や地域が共同で行いました。実りのある収穫を得るという結果だけでなく、収穫のためにどれだけ周りに認められる努力をしたかということが重要視され、手を抜いたと思われる人は村八分にされました。村八分にされると秋の収穫の分け前がもらえません。そのため日本人は、単独行動する狩猟民族を祖先に持つ欧米人より、地道で大変な作業を集団で進めていくことを得意としながらも、「他人から嫌われていないか、協調できているか」ということを気にしやすい精神構造になっているのです。

ただし、現代では八方美人タイプの人にも個人的な意見を求められるケースがあります。これからリーダー的な役割を任されることになり、どうしても八方美人をやめたいと思っている人もいるでしょう。そこで心掛けたいのが、相手に合わせて自分の意見を引っ込める癖を直すこと。相手に意見を求められたら、「もし何の制約もなかったら自分はどうしたいのか」という点に集中して頭の中を整理してから、意見を伝えてみましょう。

いきなり自分の意見を伝えることが難しい場合は、「自分はこう思う、だけど他の人と合わせます」と伝えましょう。『意見はある』だけど『行動は別』。そのように切り分ける練習をしておくと、「自分の意見は伝えられている」という自信につながります。

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しもぞの そうた 1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部となり、陸上自衛隊衛生学校メンタルヘルス教官としてメンタルヘルス、自殺防止、カウンセリングなどの教育に携わる。2015年退官。現在は惨事ストレスに対応するメンタルレスキューインストラクターとして活躍中。『自衛隊メンタル教官が教えてきた 自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数。

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