何をしても後悔してしまう

あ

の時ああしていれば……」「何であんなことを言ってしまったのか……」などと、過去のことを悔やんでもしょうがないのに引きずってしまう。その結果、前向きになれなくなり、そんな自分がダメだと自己評価してしまう人は少なくありません。しかし、後悔することはごく当たり前のことです。後悔する理由を知り、「後悔することは普通である」という認識さえできれば、きっと自分にダメ出しをしなくなります。

元々、人の感情は原始時代に野生の中で生きていくために機能していたものです。原始時代の猛獣たちは、大きな体や鋭い牙などで敵から身を守ることができました。これに対して原始人は、体も小さくて弱く、猛獣たちに追いかけられたら一溜りもありません。そこで原始人は、これから起こりうる事態を一生懸命に予測して、危険な局面を避けようとしました。これが「不安」という感情です。

不安を予測するためにはデータが必要となりますが、そのデータは過去に危険にあったこと、痛い目にあった経緯を詳細に振り返ることで蓄積されます。過去を変えることは不可能ですが、原始人は一度の失敗を何度も「後悔」することで、自分たちの未来を変えようとしました。後悔を繰り返して人は進化してきたのです。

とはいえ、現代では一度の失敗が命に関わることは滅多にありません。それなのに原始人のように何度も過去を振り返り、同等のエネルギーを費やすのは過剰なことです。その状態になる前にまず心掛けたいのが、「今のクヨクヨしている自分は次に失敗しないように分析している状態である」と認識すること。次に、問題点をきちんと明らかにして、同じ失敗を繰り返さないための分析が十分にできたと思ったら、自分の意志でキッパリ忘れてしまうことです。ただし、自分の意志で忘れられずに、疲れ果てて忘れるタイプは要注意。自分主導の忘れ方でないため、ますます自信を失ってしまいます。

もし失敗したことをまた考え始めようとしたら、「私にはもう必要ない」と切り替える練習をすることが有効です。うまく切り替えるために、趣味や休養など、気分転換のツールをいくつか用意するとよいでしょう。

イラスト

しもぞの そうた 1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部となり、陸上自衛隊衛生学校メンタルヘルス教官としてメンタルヘルス、自殺防止、カウンセリングなどの教育に携わる。2015年退官。現在は惨事ストレスに対応するメンタルレスキューインストラクターとして活躍中。『自衛隊メンタル教官が教えてきた 自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数。

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