なかなか集中できない

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なければならないことがあるのに、気が散って集中できない……。実はこれ、珍しいことではありません。元々私たちは一つのことに集中し過ぎないようにできているからです。例えば、何かに夢中になり過ぎて火事に気付かなければ、命の危険にさらされてしまいますよね。常に周囲の状態に目を光らせ、異常を検知するために気を散らせている。これは正常な状態なのですが、ただ、目の前の作業に集中しなければならないときでも周囲を意識してしまうので、困ってしまいますよね。

対処法としてまず挙げられるのは、気を散らせる原因をなるべく減らすこと。例えば、テレビやインターネット、携帯電話などは、その代表例です。作業に入る前に電源を切り、一時的に情報をシャットアウトするだけで、作業効率が上がるはずです。

気分が乗らなくてもとにかく始める、というのも有効です。何かを「始める」のに比べると、一度始めたことを「続ける」方が楽なもの。自分なりに手を付けやすい作業、例えばデスクトップや名刺の整理など「時間があったらすること」リストを作っておき、その日の気分に合うものに着手してみましょう。その延長線上で別の作業にも自然に入っていきやすくなります。

ただし、集中できても頑張り過ぎないこと。根を詰め過ぎると、疲労がどんどんたまっていき、無意識のうちに「疲れた」「嫌なことをした」という記憶が残りがち。次に同じことをする際に、マイナスイメージが先行してしまい、面倒に感じたり、集中しにくくなったりすることにつながります。

そもそも、常に高い集中状態を維持し続けるのは困難です。適度に休憩をはさみながら、気持ちの波をうまく捉えるよう心掛けて。ダメなときはダメ、と割り切った方がよいときもあります。クタクタに疲れてしまっているときには、思い切って仮眠をとる。頭ばかりを使って脳が疲れているときには、ストレッチや飲み物を飲むなどして体を動かす。そのときどきの状況に合わせて上手にリフレッシュすることが、結果的には集中力を維持することに役立ちます。

イラスト

しもぞの そうた 1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部となり、陸上自衛隊衛生学校メンタルヘルス教官としてメンタルヘルス、自殺防止、カウンセリングなどの教育に携わる。2015年退官。現在は惨事ストレスに対応するメンタルレスキューインストラクターとして活躍中。『自衛隊メンタル教官が教えてきた 自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数。

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