ストレスはがんの重要な原因のひとつとされています。実際、診療の現場の中でも、ストレスとがんとの因果関係を思わせる症例に、しばしば出合います。
ある肝臓がんの患者さんは、手術をしたあと5年ほど、再発もなく順調に過ごしていましたが、親御さんが亡くなられて、遺産相続のトラブルに巻き込まれてしまいました。そうしたら、わずか2カ月の間に肝臓全体にがんが広がって、まもなく亡くなりました。また一方では、再発が必至と思われる病状でも、10年も15年も再発せずに元気で過ごしている患者さんが何人もいます。その人たちに共通するのは、考え方が前向きで、性格的に明るく、生きがいを持っていて、ストレス解消が上手という点です。こうしてみると、ストレスはがんの重要な原因のひとつであると考えざるを得ません。
では、ストレスがなぜがんによくないのでしょうか。まず、考えられるのが活性酸素の影響。心身にストレスがかかると、私たちの体内に活性酸素が増加し、これが遺伝子を傷つけて発がんを促進します。
また、ストレスがかかると、からだの免疫力が低下することがわかっています。私たちのからだでは、1日に5〜6千個の遺伝子に異常の生じた細胞(異型細胞)が産出されます。これががん細胞のもとになるのですが、私たちのからだには、そうした異型細胞を次々と見つけては消していく免疫機能が備わっています。しかし、免疫力が低下すると、そのシステムがうまく働かず、がんが発生したり進行しやすくなったりするのです。
ストレスをなくすことは無理ですが、生活の工夫や心がけ次第で、ため込まないようにすることは可能。日頃から上手につき合いながら対処していきましょう。
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